時代の節目で行われるG7サミット-日本の戦略は

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
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田中均氏=根岸基弘撮影
田中均氏=根岸基弘撮影

 今年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)は英国のコーンウォールにて6月11日から3日間、対面で行われる。私は2002年から05年までの3年間、政務局長としてサミットの政治問題について各国との協議を担当していた。

 サミットは時の国際社会のプライオリティーを示す灯台のような役割を果たしており、今年はコロナ・パンデミックもあって時代の大きな節目を照らし出すサミットとなるのだろう。

地位は停滞したが日本が担う重要な役割

 メルケル独首相に次ぐ古顔としての安倍晋三前首相の活躍ぶりとは裏腹に、日本はこの10年で経済社会の実績は優等生から劣等生へと転落してしまったようだ。

 経済成長率、労働生産性、公的債務の国内総生産(GDP)比率、ジェンダーギャップ、報道の自由度などの比較において日本はG7中ほぼ最低となってしまった。

 コロナ禍においても感染率は低く日本人は特別だ、と思っていたものが、いつの間にかコロナ禍から抜け出せない国となっている。在宅勤務に必要なデジタル環境も遅れていることが露呈した。

 ワクチン接種率についても東京オリンピック・パラリンピックを控えている日本はG7の中で群を抜いて低く、100人当たりの接種回数(6月3日現在、日経新聞・英フィナンシャル・タイムズ集計)では英97人、米89人、加64人、独62人、伊58人、仏54人に比べ、11人という有様だ。

 しかし、経済規模においてG7の中で日本はいまだ米国に次いで2番目であり、唯一のアジアの国としての存在感は大きい。特に、今回のサミットはメンバー以外でゲストとして呼ばれている国は印、韓、豪のアジア太平洋の3カ国であることが示唆するように、サミットの主題は中国なのだろうし、日本が米中対立の最前線に位置する国として格別な役割を担うのは間違いがない。

米中対立は「けん制・競争と排除・協力」の複雑な関係

 まず、これからの国際構造についてどのような共通認識をもつべきなのだろうか。近年急速に目立ち始めているのは強権的政府による強権的な行動だ。香港や新疆ウイグル自治区における中国の強権的行動、ミャンマーにおける国軍のクーデターに続く民衆への暴力的弾圧、ロシアやベラルーシにおける反体制派への強権的抑圧などコロナ・パンデミックで世界が内向きとなっている間隙(かんげき)を縫っての行動だ。

 この間、そのような行動を止める国際社会の力は大幅に低下している。一つには、中国の国力が飛躍的に拡大し、今後10年以内にGDPで米国を追い越す可能性がうんぬんされ、国力のバランスが変わったことだ。中国は中国の巨大…

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田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。2021年3月よりTwitter開始(@TanakaDiplomat)、毎日リアルタイムで発信中。