北方領土交渉に対するプーチン大統領の意欲

佐藤優・作家・元外務省主任分析官
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佐藤優氏=久保玲撮影
佐藤優氏=久保玲撮影

 ロシアのプーチン大統領が、6月4日に世界の主要通信社代表とリモートで会見した。この席でプーチン氏は北方領土問題解決に向けた強い意欲を表明した。

 <ロシアのプーチン大統領は4日、昨年7月に改正された憲法に領土割譲を禁止する条項が盛り込まれたことを踏まえ、北方領土問題について「憲法を考慮しないといけない」と述べた。この条項が領土交渉に影響する可能性を認めた格好だ。一方で「(日本との)平和条約交渉を止めるべきだとは思わない」とも語り、交渉継続に意欲を示した。世界の通信社幹部とのオンライン会見で述べた。

 プーチン氏は2月にも「憲法に反することはしない」と語っていた。今回の会見では「日本の立場が頻繁に変わってきた」と批判。平和条約締結後に2島を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言後に「(4島返還を求める)日本側が交渉を止めた。その後、交渉を再開した時に2島の話になったが、また4島に戻った」と指摘し、「ロシアもソ連も4島引き渡しに同意したことはない」とくぎを刺した。日ソ共同宣言に明記された平和条約締結後の2島引き渡しについては言及しなかった。

 プーチン氏は2000年の大統領就任直後、日ソ共同宣言の履行に前向きな姿勢を示したが、日本側が4島返還を求めたことに反発し、交渉が停滞した時期がある。

 一方、「日露とも戦略的観点から平和条約締結に関心を持っている」とも強調。ただ、米軍による日本への中距離ミサイル配備の可能性には改めて懸念を表明した。><プーチン氏、北方領土問題「改正された憲法を考慮」 対日交渉は意欲>

 昨年7月のロシア憲法改正によって、ロシアが1956年の日ソ共同宣言で約束した歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す可能性がなくなったとの見方をする有識者やマスメディア関係者がいるが、この種の解釈は間違いだ。一部有識者らの間違った見解を正しておく必要がある。

 ロシアのクレムリン(大統領府)や外務省関係者が「クリル諸島を日本に引き渡すことはない。これら諸島について日本と交…

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佐藤優

作家・元外務省主任分析官

 1960年生まれ。同志社大大学院博士前期課程修了。神学修士。外務省入省後、モスクワの日本大使館に勤務。著書に「自壊する帝国」「私のマルクス」など。