宮家邦彦の「公開情報深読み」

ブリンケン国務長官の天安門事件32周年声明を「深読み」する

宮家邦彦・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
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ブリンケン米国務長官=ロンドンで2021年5月3日、AP
ブリンケン米国務長官=ロンドンで2021年5月3日、AP

 6月3日、米国のトニー・ブリンケン国務長官が天安門事件32周年に際しプレスステートメントを発表した。毎年この日に発表される声明は、中国を「人権の尊重を求めた人々に暴力で応じた」と非難し、「人権の尊重を求める中国の人々に米国は寄り添い続ける」と強調したと日本では簡潔に報じられた。当然ながら、中国側の反発も例年通りだった。

 翌4日、中国外務省報道官は「中国政府はあの政治的な騒ぎにつき既に明確な結論を出している。(米声明は)内政干渉であり、断固反対する」「米国側は人権問題で他国を中傷する前に自国の人権問題を直視すべき」であり、「人に説教する資格はない」と強く反発した、などと日本メディアは報じている。まあ、そんなところだろうな。

 天安門事件をめぐる米中間の非難の応酬は今年で31回目、既に6月初旬の年中行事になっているからだろうか、内外メディアの関心は必ずしも高くない。しかし、今回のブリンケン声明と中国側の反論を、2009年の天安門事件20周年の際の米中間のやり取りなどと比較してみたら、微妙ではあるが、かなり違いがあることが分かった。

 そこで今回は、恒例となった米国務長官の声明と、これまた恒例となった中国側反論を、天安門事件20周年、30周年の際のやりとりと比較しながら、最近の米中関係、特に、米国の対中政策の変遷について「深読み」してみたい。毎度のことながら、以下はあくまで筆者の個人的分析である。

ブリンケン声明の内容

 ブリンケン声明は全体で239語、比較的短い文章だが、内容はかなりパンチが効いている。特に、天安門事件を「皆殺し、大虐殺」と表現したのには正直驚いた。こうした表現は、天安門事件関連では、恐らく今回が初めてではなかろうか。以下に…

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宮家邦彦

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1953年生まれ。外務省日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを経て2005年に退職。立命館大客員教授、外交政策研究所代表なども務める。近著に「AI時代の新・地政学」。フェイスブック「Tokyo Trilogy」で発信も。