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韓国特有の事情を専門家に聞いた 性的少数者差別の背景にあるものは

日下部元美・外信部記者
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韓国の性的少数者による当事者団体に所属する女性。「差別禁止法 今すぐ制定せよ」と記したプラカードを手にしている=当事者団体「QUV」提供
韓国の性的少数者による当事者団体に所属する女性。「差別禁止法 今すぐ制定せよ」と記したプラカードを手にしている=当事者団体「QUV」提供

 韓国社会では性的少数者に対する差別や偏見が根強い。韓国のキリスト教・プロテスタントの保守派が近年、性的少数者の中でも特に同性愛に対する反対運動を始めたことが影響したと言われている。

 韓国の性的少数者の問題に詳しい福永玄弥・都留文科大非常勤講師(38)に、差別の背景や歴史について聞いた。

「反同性愛」が保守層の結集軸に

 ――韓国でプロテスタント団体は影響力があるのですか。

 ◆韓国は多数の信者を擁する大規模なプロテスタント教会が多い。世界のプロテスタント教会で規模が大きい上位50位に、韓国の24教会がランクインしている。ソウル市の汝矣島(ヨイド)純福音教会は単一の教会としては世界最大規模で、所属する信者は公称で約80万人もいる。このため他の国と比べても、社会への影響力が非常に大きい。2004年ごろには米国に次いで世界2位の宣教師派遣大国になった。

 ――キリスト教は聖書の記述に基づき伝統的に同性愛を排斥してきた歴史がありますが、韓国のプロテスタントがとりわけ激しい反対運動を展開したのはなぜですか。

 ◆韓国は1987年に軍事独裁体制から民主主義体制に移行した。90年代からはマイノリティーの人権に対する関心が高まる中で、性的少数者の当事者による運動が活発化した。これにプロテスタント保守派が危機感を募らせ、07年ごろから同性愛者に対し、組織的な激しい反対運動を展開した。

 ――なぜ同性愛者がとりわけ攻撃の対象になったのでしょうか。

 ◆韓国は長年にわたり「親米、反共」というイデオロギーの下、軍事独裁政権が敷かれていた。プロテスタント保守派もこの体制を支持した。この時期、社会にとって不利益をもたらすとみなされたマイノリティー集団は「共産主義者」のレッテルを貼られた。プロテスタント保守派は、このレッテルを利用して左派や進歩派などの敵対する勢力を批判してきた。だが、冷戦体制が終結すると、…

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日下部元美

外信部記者

1991年東京都生まれ。2014年入社。北海道報道部を経て、2019年5月から現職。2020年6月から韓国・ソウルに語学留学中。現在に至るまで担務の傍ら性的少数者(LGBTなど)や障害者など社会的マイノリティの取材を続け、旧優生保護法下の障害者らに対する強制不妊手術問題を扱ったキャンペーン報道『旧優生保護法を問う』の取材班に参加した。好きな物は映画と漫画。Twitter @MoKusakabe