再選を目指さないバイデン大統領だからこその強さ

横江公美・東洋大学国際学部教授
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横江公美氏=吉田航太撮影
横江公美氏=吉田航太撮影

 「引退を決めた議員にはロビー活動ができない」

 何の意味か、と思うかもしれないが、これはワシントンのロビイストたちの間での常識だ。再選を目指す政治家は票を得るための政治活動を優先する。議会での採決でも、自分の票田に寄り添った行動をとる。だが、再選しないと決めた政治家はしがらみから解き放たれる。自分の信念に基づいて議事堂の採決に向かう。

 例えば、共和党は国連海洋法条約への参加に反対してきた。普通ならば、海外ビジネスに積極的な共和党は賛成のように思えるが、反対している。

 共和党の方向性とは違うので調べてみたら、なんと理由はレーガン元大統領が反対だったからだというのだ。共和党にはレーガン元大統領をひいきとする大票田が存在してきたため、選挙で勝利したい共和党の議員はレーガン元大統領と異なる考えはとれないという背景がある。

 だが、引退を決めた議員は票を気にする必要はない。いざ採決が行われるとなれば、自らの信念に基づいて議会での投票行動をとることができる。

信念を貫ける「偉大な大統領」になるか

 こう考えると、バイデン大統領は偉大な大統領として名前を残す可能性がある。この4年に全てを懸けるという思いは振り切れているはずだ。さらに、酸いも甘いも米国政治の内側を誰よりも熟知するのがバイデン大統領である。

 バイデン大統領は最初の妻と娘を交通事故で失った。6年前には長男をがんで失っている。親にとって子供が先に旅立つという逆縁ほどつらいことはないと言われる。

 また、トランプ政権の4年間は、オバマ政権で副大統領だったバイデン氏にとっては屈辱的な日々であったと推測できる。トランプ前大統領は親の敵のようにオバマ政権が積み上げてきた地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、そして医療保険制度改革(オバマケア)を壊していった。

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横江公美

東洋大学国際学部教授

 1965年生まれ。VOTEジャパン(株)社長、米国のシンクタンク「ヘリテージ財団」上級研究員を経て、17年より現職。著書に「隠れトランプのアメリカ」「日本にオバマは生まれるか」「アメリカのシンクタンク」など。