ふらっと東アジア

ウイグル問題を巡る内外認識ギャップの難しさ

米村耕一・中国総局長
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北京市内で行われた「新疆に関する記者会見」=2021年6月3日、米村耕一撮影
北京市内で行われた「新疆に関する記者会見」=2021年6月3日、米村耕一撮影

 中国新疆ウイグル自治区主催の記者会見への招待が6月初めに届いた。昨年初めに始まった自治区政府の「新疆問題に関する記者会見」は、この時点で38回目(うち北京開催は今回で10回目)だったが、呼ばれなければ参加困難な仕組みで、私に声がかかったのは、これが初めてだった。

 北京市内で行われる会見には米CNNなども過去には参加しているが、中には「プロパガンダなので呼ばれても断った」という海外メディアの記者もいる。回を重ねるうちに欧米メディアの出席希望者も減り、とうとう私にも声がかかったのかなと思いつつ、せっかくなので話には聞いていた会見の雰囲気を感じてみようと参加した。

38回目の「新疆記者会見」

 6月3日の記者会見のテーマはウイグル族など少数民族に対する「強制労働」問題だった。

 北京市内に自治区政府が持つビル内の会場で、自治区の共産党宣伝部幹部、自治区政府の報道官、人的資源・社会保障部門のトップ、紡績業協会幹部、紡績工場の工員らが一列に並ぶ。名前から少数民族とわかる幹部も多かった。

 最初に宣伝部幹部が「いわゆる強制労働問題だが、米欧の一部反中機関と関係者による完全なデマであり、真相を語ることで国際社会に対して米欧反中勢力の卑劣な行動を明らかにする」と、たんかを切った。その後の説明の要点は、中国政府は一貫して強制労働に反対しており、明確に強制労働を禁ずる法律がある以上、そんなことは起きるはずがなく、起きれば関係者は処罰されるということだった。

 また、自治区のアクス市内の紡績工場に勤務するというウイグル男性が「紡績工場には面接を受け、労働契約を結んで入った。夫婦で月8000元(約13万円)を得ており、待遇はとても良い。強制労働など見たこともない」とも証言した。

 地方政府が関与し、沿岸部の工場などへと少数民族の労働者を送り込む事業は「強制性」を指摘する見方もあるが、これについて人的資源・社会保障部門トップは「就業こそが脱貧困のために最も有効な手法だ」と述べ、労働者の意思に基づく貧困対策だと説明した。

 ただ、英米独などが国連人権高等弁務官による独立調査を求めていることについては、党宣伝部幹部が「人権専門家などが新疆に来ることを歓迎する」と言いつつ、「しかし、有罪推定式に、入り込んで調査したりすることには反対だ。新疆に…

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米村耕一

中国総局長

1998年入社。政治部、中国総局(北京)、ソウル支局長、外信部副部長などを経て、2020年6月から中国総局長。著書に「北朝鮮・絶対秘密文書 体制を脅かす『悪党』たち」。