「戦争の引き金」敵基地攻撃能力の議論は全体を見て

小川和久・静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト
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小川和久氏=北山夏帆撮影
小川和久氏=北山夏帆撮影

 6月5日付毎日新聞朝刊は「艦艇、戦闘機搭載型スタンドオフミサイル開発へ 22年度にも着手」というスクープを掲載した。敵基地攻撃能力についても言及されている。甲論乙駁(こうろんおつばく)が続いてきた敵基地攻撃論について整理を試みたい。

 毎日新聞は「防衛省は2022年度にも、初の国産長射程ミサイルとして開発中の地上発射型『12式地対艦誘導弾』をベースとする、艦艇や戦闘機から発射可能な新たな長射程ミサイルの開発に着手する検討に入った。中国の海洋進出などを念頭に、艦艇や戦闘機にも搭載できる『ファミリー化』を進め、相手の脅威圏外から発射できる『スタンドオフ防衛能力』の強化を図る」と報じている。

 ミサイル開発に関する記述は適正だが、気になるのは、「防衛省関係者は『政府は長射程ミサイルの開発について<敵基地攻撃を目的としたものではない>と説明しているが、転用できるかどうかについて見解が示されたわけではない』と述べている」という部分だ。これは防衛省が敵基地攻撃論について確たる考えを備えていないことを物語っている。

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小川和久

静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト

 1945年生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕内閣ではドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。『フテンマ戦記基地返還が迷走した本当の理由』『日米同盟のリアリズム』など著書多数。