少年事件は減少している
事件を起こした18、19歳を「特定少年」とし、刑罰化・厳罰化する改定少年法が5月に成立した。18、19歳を、形式的には「健全育成」を目的とする少年法の対象にとどめながら、実質的にその理念である保護の対象から外すものとなっており、少年法を骨抜きにするものだ。
18、19歳の実態を踏まえたものとは言えず、なぜ法改正が必要なのかもまともに説明できない不合理な法案であり、日本共産党は反対した。
凶悪な少年事件が起きると大々的に報道されることなどから、少年事件は増加傾向にあり、凶悪化していると思われがちである。しかし現実には、少年事件数はピークの10分の1に減少し、人口比でも減少し続けている。殺人、強盗、強制性交など凶悪事件は1%程度で、凶悪化している事実もない。
これは、現行の少年法とこれに基づく保護処分が有効に機能していることを示すものだ。今回の法改定は、少年事件へのイメージと現実の乖離(かいり)を放置し、むしろイメージを利用して刑罰化・厳罰化を図ったものといえる。
立法事実を欠く法律
少年法の対象年齢の引き下げ議論は、2022年4月施行の改正民法で成年年齢が18歳に引き下げられることを受けて始まった。しかも、それは「憲法改正」が出発点となっている。07年、第1次安倍内閣の下で国民投票法が強行採決され成立し、国民投票権年齢が18歳からとされた。
ところが、選挙権年齢と一致しないため憲法改正の国民投票を行うことができず、公職選挙法の選挙権年齢や民法の成年年齢を引き下げることが改憲を進めたい自民党にとって重要課題となった。
少年法改定もその延長にあり、18、19歳の実態や少年法の課題など、中身の問題から改正議論が始まったわけではない。年齢区分は、個々の法律の趣旨や目的に沿って定められるものであり、すべて一律とする必要はない。…
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