オアシスのとんぼ

韓国の「親日派」と曺国・元法相の奇妙な共通点とは

澤田克己・論説委員
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 審査を終えソウル東部地裁から出る韓国の曺国元法相、2019年12月26日撮影=共同
 審査を終えソウル東部地裁から出る韓国の曺国元法相、2019年12月26日撮影=共同

 韓国の与党「共に民主党」の有力な次期大統領候補の一人である李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が7月2日のオンライン記者会見で、「親日派」問題に言及した。進歩派と呼ばれる政治勢力が保守派攻撃をする時の定番メニューだ。李知事は「韓国社会に残る重要な問題」として、「親日残滓(ざんし)の清算、あるいは親日支配構造の清算」の必要性を強調した。

 李知事は「日本にとっては隣の国の問題にすぎないだろう」とも語った。あくまでも韓国の国内問題ということだ。しかし同時に、現在の日韓関係悪化の責任を日本の「保守右翼の政治集団」に押し付けるステレオタイプの認識も口にした。二つの問題は別だと言いながら、自ら混同して語ることで「反日イメージ」を持たれることになっている。慎重さに欠けるという批判は免れないだろう。

植民地支配への協力と新たな国造りへの寄与と

 親日派とは、日本による20世紀前半の植民地支配に協力したとされる人々を指す。いわゆる植民地エリートである。独立運動をしていた人々の観点から言えば「裏切り者」だ。一方で親日派には、独立後の国造りに大きな役割を果たした人が少なくない。日本の支配下で高等教育を受けた人々の知識と経験は、人材不足の新生国家の運営に欠かせなかったからだ。

 それでも韓国の進歩派は、親日派を目の敵にする。背景にあるのは、本来なら断罪されるべきであった親日派が社会的地位と富を次世代に継承させてきたことを「正義に反する」と見る考えだ。深刻な格差拡大が社会問題となっている現在の韓国で、「正義」「公正」はもっとも訴求力のあるキーワードである。

 「親日派の系譜」と攻撃されるのは、民主化運動を弾圧しつつ経済成長を実現させた保守派だ。当時の親日派が生きているわけではないから、問題とされるのは「残滓」や「支配構造」ということになる。

 このほど邦訳が刊行された鄭鍾賢(チョン・ジョンヒョン)韓国仁荷大教授の著書「帝国大学の朝鮮人」(慶応義塾大学出版会、渡辺直紀訳)は、内地の帝国大学に学んだ朝鮮人に関する初の本格的な研究だ。内地にあった七つの帝大を卒業した朝鮮人は784人。その多くは、親日派とされる人々である。

 主として東京帝大と京都帝大の卒業生を追った同書によると、朝鮮人卒業生の半数ほどが朝鮮総督府や満州国、日本本土の官僚となり、残りの多くは教職に進んだ。植民地の企業家として成功した人物もいた。留学中に左翼思想や民族主義に目覚め、日本帝国主義に抵抗する道を選んだ人もいたが、少数派だった。

 植民地出身者への差別はあった。それでも「帝国大学の朝鮮人卒業生は、日本の『内地』の(官僚)社会で成功する道は限られていたが、総督府の植民地権力の下での出世はある程度確保されていた」(同書)という。

 電話イン…

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澤田克己

論説委員

1967年生まれ。埼玉県狭山市出身。91年入社。ソウル支局やジュネーブ支局で勤務した後、論説委員を経て2018年から外信部長。2020年4月から再び論説委員。著書に『「脱日」する韓国』、『韓国「反日」の真相』、『反日韓国という幻想』、『新版 北朝鮮入門』(共著)など。