ふらっと東アジア

貴賓席でみえた習近平氏への権力集中

米村耕一・中国総局長
  • 文字
  • 印刷
演説する習近平氏=北京で2021年7月1日、新華社AP
演説する習近平氏=北京で2021年7月1日、新華社AP

 7月1日の中国共産党創建100年の記念日とその関連行事は、私たち外国人記者にとって習近平党総書記(国家主席)をはじめとする中国の指導者たちを比較的、近くで見ることのできる貴重な機会だった。

 記念日の3日前のことだ。創建100年の記念公演を観覧するために北京市内の国家体育場(鳥の巣)に到着すると、私たちの観覧席の前方に貴賓席があつらえてあった。客席は階段状に高くなっていくので、私たちは貴賓席を見下ろす格好になる。

 貴賓席のテーブルを眺めると、習氏をはじめとする党政治局常務委員ら指導者たちの名前を書いたピンクの名札がずらっと並んでいる。まだ、誰も座っていない。

 しばらくすると、習氏の名札の所にだけ立っていた係の女性が、隣の男性に渡された消毒液に浸した布のようなもので、習氏の名札周辺の机の上、そして備品を念入りに、徹底的に、拭き上げた。

 そのとなりの席は李克強首相の名札が置かれていたが、こちらにはパック入りの市販の消毒用ティッシュがポンと置かれているだけ。そのほかの政治局常務委員の席も同様で、必要があれば自分で拭くことになっているようだ。

 「なるほど。ナンバーワンとナンバー2以下では、こんなところからも差がつくのか」と、思わず感心し、習氏への権力集中を改めて実感した。

集団指導はなくなり習氏独裁なのか

 鄧小平以来の中国の政治システムは、「建国の父」とされる毛沢東の個人独裁が権力の暴走を生み、それが中国社会を混乱に陥れ、多くの犠牲者を生んだ「文化大革命」(1966~76年)につながったとの反省から、集団指導体制が取られてきた。

 しかし、習政権では、党中央の権限が強化されたうえで習氏が党中央の「核心」と位置づけられ、さらに習氏が積極的に展開した反不正・腐敗キャンペーンの威力もあって、習氏個人への権力集中が大きく進み、集団指導体制は大幅に弱まったとされている。

 これには反論もある。…

この記事は有料記事です。

残り1883文字(全文2681文字)

米村耕一

中国総局長

1998年入社。政治部、中国総局(北京)、ソウル支局長、外信部副部長などを経て、2020年6月から中国総局長。著書に「北朝鮮・絶対秘密文書 体制を脅かす『悪党』たち」。