小川和久氏=北山夏帆撮影
小川和久氏=北山夏帆撮影

 マスコミでもほとんど話題にもならなかったが、6月29日の菅義偉首相の動静のうちの1時間11分間に世界の情報関係者の目が注がれた。毎日新聞の「首相日々」には「午後5時15分 陸上自衛隊ヘリコプターで千葉県の陸自習志野演習場。視察。同6時26分 陸自ヘリで官邸屋上ヘリポート」と報じられているにすぎないが、きわめて重要な意味を持つ日程だった。

狙いは抑止効果

 習志野駐屯地は、陸上自衛隊の精鋭部隊・第1空挺(くうてい)団の拠点として有名だが、この駐屯地の中に部隊名を表示していない部隊があることは知られていない。2004年3月、米国陸軍のグリーンベレーやデルタフォースのような特殊部隊を目指して設立された陸上自衛隊で唯一の特殊部隊・特殊作戦群(以下、特戦群)だ。菅首相はこの部隊を駆け足で視察した。

 首相の視察の目的は、目前に迫る東京オリンピック・パラリンピックに向けて、特殊部隊の状況を把握し、部隊を督励したとされているが、それだけではない。

 最大の目的が、首相の特殊部隊訪問を世界の情報関係者やテロリストに見せつけることで、抑止効果を狙うところにあったことはいうまでもない。加藤勝信官房長官は「部隊の特性上、差し控える」として視察の詳細を明らかにしなかったが、実戦に即した訓練の一端が披露されたものとみられる。

本来はトップの手足

 ひとくちに特殊部隊といっても、…

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小川和久

静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト

 1945年生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕内閣ではドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。『フテンマ戦記基地返還が迷走した本当の理由』『日米同盟のリアリズム』など著書多数。