消えたワクチン

森永卓郎・経済アナリスト、独協大学教授
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森永卓郎氏=武市公孝撮影
森永卓郎氏=武市公孝撮影

 ワクチン接種に急ブレーキがかかっている。職域接種の新規申請が停止されただけでなく、自治体が準備した大規模接種会場が休廃止に追い込まれ、すでに予約した個別接種をキャンセルする病院まで現れた。ワクチン供給が追い付かなくなっているからだ。

 河野太郎行政改革担当大臣によると、7月以降のワクチン供給が減り、供給可能量の3倍程度の要請が自治体から寄せられていて、自治体への配分を絞らざるを得ない状況だという。実際、ワクチンの配分を大幅に抑制された自治体からは、接種計画を大幅に見直す必要が出てきていると悲鳴が上がっている。

 しかし、政府はワクチン接種が今後は計画通りに進むと強調している。7月8日の会見で菅義偉総理は、「9月までに希望される全ての国民に接種が可能となる2億2000万回分の十分な量が確保されている。速やかに接種に万全を尽くす」と語り、ワクチンによる新型コロナの収束に向けた自信をみせた。

 しかし、本当にこの言葉を真に受けてよいのか、私は大きな疑問を抱いている。元々の政府の説明では、ファイザー社製のワクチンは6月末までに1億回分、さらに9月末までに7000万回分が供給されることになっていた。一方、モデルナ社製のワクチンは6月末までに4000万回分、さらに9月末までに1000万回分が供給されることになっていた。つまり、菅総理の9月までに2億2000万回分のワクチン供給というのは、当初計画通りの数字だ。

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森永卓郎

経済アナリスト、独協大学教授

1957年生まれ。日本専売公社、経済企画庁、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て独協大経済学部教授。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済。コメンテーターとしてテレビ番組に多数出演。著書に「年収300万円時代を生き抜く経済学」(光文社)など。