
米国がアフガニスタンの駐留軍を8月いっぱいで撤退させると決めたことから、周辺地域で懸念が強まっている。私は11年前に、隣接する旧ソ連のタジキスタンを訪れた。当時を振り返りながら、隣国を覆うアフガンの影について考えたい。
ファインダーをのぞき込むと、乾いたアフガンの土地が視界に入ってきた。ところどころに草木が茂り、古びた電柱や電線が点在する。別の角度でのぞくと、鉄条網に囲まれた国境の検問所と警備の兵士が見えた。ファインダー越しだが、初めて見るアフガンの風景に興奮を覚えた。
これは2010年5月、タジキスタンの南部ニジノピャンジを訪れ、国境線となるピャンジ川を挟んでアフガン側をのぞき込んだときの風景だ。このときは両国をつなぐ橋を取材した。その3年前まで両岸の人々は船で行き来していたのだが、アフガンに駐留する米軍が橋を完成させて、人の流れや物流の活性化に貢献したという。
当時は1990年代後半からアフガンを支配していたタリバンの政権が崩壊してから10年目を迎え、不完全ながらも平和と安定を享受していたといえる。アフガン北部のクンドゥズ州でセメントを積み込んだアフガン人のトラック運転手は私の取材に、タジキスタンまで運び、1回当たり200~300ドルの収入を得ていると話した。冷戦時代、タジキスタンはソ連の共和国の一つだった。79年のソ連によるアフガン侵攻という負の歴史はあるものの、タジキスタンとアフガンのつながりは深まりつつあるようだ。
脅威にもなるアフガンとの深いつながり
もともとは歴史を共有し、民族的にも近い二つの国である。…
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