潮流・深層

トランプ氏に牙むいた警官 広がる議会乱入事件の波紋

古本陽荘・北米総局長
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集会で演説するトランプ前米大統領=アリゾナ州で2021年7月24日、AP
集会で演説するトランプ前米大統領=アリゾナ州で2021年7月24日、AP

 昨年11月の米大統領選の結果に不満を持つ群衆が暴徒化し連邦議会に乱入した今年1月6日の事件では、連邦捜査局(FBI)などがこれまで約600人を不法侵入や公務執行妨害などの容疑で逮捕している。

 しかし、事件の直前にホワイトハウス近くで選挙結果に反対する集会を開き、自らの支持者に議会に向かうよう呼びかけたトランプ前大統領がどこまで関わっていたのかという事件の核心部分は謎のままだ。

戦場さながらの現場

 そんな中、事件を調査するため下院に設けられた特別委員会が7月27日に初めての公聴会を開催した。証言したのは現場で議会を死守した警察官4人(職域警察である議会警察の2人と首都ワシントンの警察である首都警察の2人)。警察官らは、人数では圧倒的に多い暴徒たちにどう立ち向かったかを生々しく説明した。衝撃を受けた議員らは涙を浮かべ、声を詰まらせながら質問するという異例の公聴会となった。

 証言した首都警察のマイケル・ファノーン巡査は、キャリアを議会警察でスタートした。事件当日は呼ばれたわけではなく、警察無線で議会が襲撃されたことを知り、同僚と共にかつての職場である議会に自主的に向かった。議会地下西側テラスの入り口で、突入しようとする暴徒と侵入を防ごうとする警察官が激しく衝突していた。前線に立った際、「見渡すと群衆があまりに多く、衝撃を受けた」。

 暴徒ともみ合いが続く中、体をつかまれ、群衆側に引きずり込まれた。素手や何らかの金属でめった打ちにされた。スタンガンを頭にあてられ、何度も電流の衝撃が体を走った。警察無線や警察バッジは奪われた。次に装着していた銃が狙われた。暴徒たちの中から「こいつの銃を奪って、殺してやれ」という声が聞こえた。頭に浮かんだのは4人の娘だった。「俺には子供がいるんだ」。できる限りの声を振り絞ってそう叫んだ。暴徒の情にすがるのが最後の手段だった…

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古本陽荘

北米総局長

1969年生まれ。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)