今、政治指導者に問われるもの--使命感・危機意識・ビジョン

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
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田中均氏=根岸基弘撮影
田中均氏=根岸基弘撮影

 10月末の任期満了選挙になるのか、それとも菅義偉首相が解散権を行使し、自民党総裁選の前に衆院選を実施しようとするのか。

 いずれにせよ今度の衆院選には二つの重大な意味合いがある。一つには、9年という長期にわたった安倍-菅政権の評価を行う選挙となることだ。

 さらには、日本がこのまま沈んでいく国になるのか、あるいは新しい方向性を見いだしていけるのかの節目となるという点だ。日本の民主主義の在り方が問われている。

総裁選の前の衆院選は自民党の自滅行為――開かれた総裁選を

 自民党総裁の任期は9月末までであり、8月中に総裁選の日程を決めたにしても、9月に入り国会を召集の上、衆院を解散し総選挙に持ち込むことは可能だろう。

 あるいは総裁選を総選挙に先立ち行うが、形式的な形に終わらせ、菅総裁の再選を決める動きもあるようだ。

 すでに二階俊博・自民党幹事長は、菅首相が新型コロナウイルス感染防止や安全安心の五輪開催で業績を上げ国民の評価を得ているので、1年で交代する必要はないという見解を示している。

 ただ現実を見ると、それは自民党の自滅行為になるのだろう。コロナ感染急拡大の恐れが強い中で、五輪をなし崩し的に強行したことへの国民の不満は強い。

 結果的には緊急事態宣言にもかかわらず記録的な感染者の拡大となり、医療崩壊も目前にある。その間、酒提供の制限のために金融機関を使うとか、唐突にコロナ患者の入院規制を打ち出すなど、場当たりとしかみえない施策を打ち出す政府への不信感は強い。

 現行の体制で選挙を行うのは、自民党にとって大きなリスクとなる。総選挙は単に菅政権を信任するか否かではなく、菅首相も官房長官として一心同体であった安倍政権を含めた9年の長期政権への審判となる。

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田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。2021年3月よりTwitter開始(@TanakaDiplomat)。毎日リアルタイムで発信中。YouTubeチャンネル(@田中均の国際政治塾)。