Social Good Opinion

Z世代の食料問題への選択「持続可能な食文化を作る」

長内あや愛・株式会社食の会代表取締役
  • 文字
  • 印刷
長内あや愛さん=筆者提供
長内あや愛さん=筆者提供

 食料問題に直面していると言われている昨今ですが、食べ物の「美味(おい)しい」に意味はあると思いますか。まずくても栄養を満たして満腹になればいいですか。食べたいものを食べることと、食べるべきものを食べること、どちらが優先だと思いますか。

2050年に直面する食料危機とは

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、2030年までに「飢餓ゼロ」が掲げられています。最近の欧州連合(EU)、世界食糧計画(WFP)、国連食糧農業機関(FAO)などの報告書を見てみると、新型コロナウイルスのまん延によって、20年の「急性飢餓人口」が前年から約2000万人増え、約1億5500万人に上るなど、このままでは飢餓ゼロの目標達成が難しい現実もあります。

 さらに国連の調査によると、50年には世界人口が増加して100億人に達し、現状の食料システムでは需要と供給のバランスが崩れる可能性が指摘されています。特に50年には、全人口のたんぱく質を補えない「たんぱく質危機」が起こると予想され、これに対して世界経済フォーラムでは世界全体での対応策として、①代替食品(たんぱく質)の開発と普及②現在の産業農業システムの改善③消費者動向の変革(2019年時点)――の三つの目標が必要であり、これらが達成されることによって、持続的な食産業と、より健康な生活が実現可能になる、としています。(参考:農林水産省「世界の食料需給見通し―2030年における世界の食料需給見通し―世界食料需給モデルによる予測結果―」)

 <意識改革や「1/3ルール」見直しを 求められる政府の食品ロスへの取り組み

 <精進料理 命育む自然の力に感謝

 人口増加によるたんぱく質の急激な需要増加が、環境に大きな負荷をかけることも予測でき、持続可能な食料システムを築くことは急務です。私たちZ世代は、2050年には50代。人生100年と考えればまだ人生半分。私はこの食糧危機に立ち向う義務と焦りを持っています。

Z世代が担うべき、持続可能な食とは?

 私は普段、食文化をアカデミアの視点でひもとき、実際に食事として作りあげる、食のクリエート研究を行っています。日本の食文化史の中で、一番大きな変化があったのは明治時代です。島国であり鎖国をしていた日本に黒船が来航し、食の西洋化が起こり、日本の食卓シーンが一変しました。この明治時代にフォーカスし、当時の料理書、新聞のレシピ欄などから、今とどのように違うのか。どんな食材が廃れて、発展したのか。資料からひもとくだけでなく、実際の調理法を再現し、復刻再現料理を作って食べてみる研究です。食の聖地・日本橋で提供する店も経営しています。過去の食から、持続可能な食のヒントを探っています。

食の會日本橋で提供している「時事新報」の復刻再現御膳=筆者撮影
食の會日本橋で提供している「時事新報」の復刻再現御膳=筆者撮影

同世代へ訴える、生きるための食事と豊かな嗜好品の食事の違い

 私が食へ関心を持ち始めたのは14歳の頃でした。当時お菓子作りにはまっていた私は、世界中のお菓子を食べてみたい、と世界のお菓子を調べて作っては毎日ブログを更新しました。

 「菓子」は嗜好(しこう)品です。人が生きるために食する食べ物以外の意味を持っています。嗜好品はなくても生きていけますが、あると豊かなものです。当時驚いたのは、世界で「菓子」のない国はなかったことです。農作物が豊かでない地域にも必ず菓子がありました。ここにヒントが隠されていると思いました。そしてその菓子は、その土地で手に入れることのできる地産地消の食材と、その国の縦軸と横軸の歴史から構成されたものでした。その後、高校3年生のとき、世界経済フォーラムダボス会議U30日本代表起業家コンテストに「食の地域活性」をテーマに出場し、食糧危機には「地産地消」が鍵であると気がつきました。

オーガニック給食こそ日本の食を守る一手

「食」を自分のスタイルで選ぶ

大学対抗フードロスをテーマにしたcreative cooking battle youth司会・実況の様子=creative cooking battle youth提供
大学対抗フードロスをテーマにしたcreative cooking battle youth司会・実況の様子=creative cooking battle youth提供

 今や世界中どこにいても、異国の味を食べられるようになり、世界中で食が同質化していく傾向にあります。食需要への安定的な供給はできますが、食文化の視点から見ると貧しい話です。貧しいだけでなく、地産地消が消え、食文化に個性がなくなることの行き着く先に問題の解決はあるのでしょうか。地産地消が持続可能な食であり、豊かなことではないかと考えるのです。

「食べるべきもの」と「食べたいもの」双方を作る

 食料をただ大量生産するだけでは、食料問題、たんぱく質危機を解決する糸口にはならない。大量生産では同じ品種のものを効率的に作ることに重きがおかれ、それは各地域の農業が衰退していくことと同義です。これからの食のニーズも満たしていけないし、破綻へ向かうと捉えています。

 今、新たな食資源として、微生物、培養肉、昆虫食などの素晴らしい開発が進められています。しかしそれを「美味しく」食べる文化を作ろうとしないと、人類はその食を選ばずに危機へ向かう一方になります。「食べるべき」ものでも、「食べたいもの」を選んでしまうのが生きている私たちです。食の性質上、「美味しい」も食料問題解決には必要不可欠だと思っています。

 未来へサステナブルな「食文化」を新たに作る必要があります。Z世代の私は、過去の食、現在の食をレシピという形で保存していくことを通し、持続可能な「食べるべき食」と「食べたい食」の両方に取り組んでいきます。

 食料廃棄問題(フードロス)、食料自給率、フードマイレージなど考えなければいけないことは山積しています。未来でも美味しく豊かな食が全世界で食べられますように。持続可能な食の実現へ、行動していきます。

  「Social Good Opinion」の<インスタグラムアカウント>を開設しました。そちらも合わせてご覧ください。

長内あや愛

株式会社食の会代表取締役

1996年生まれ。株式会社食の会代表取締役、食の會日本橋オーナー、食文化研究家、慶応大学SFC研究所上席研究所員。  14歳からAmebaオフィシャルブログ「14歳のパティシエは今食文化研究家」を現在まで毎日10年以上更新中。調理師・製菓衛生師・唎酒(ききさけ)師。大学在学中に食の会起業。修士課程に進学し研究を行いながら、復刻再現料理の食事製作、提供の場として2019年8月に日本橋に「食の會日本橋」オープン。  世界経済フォーラムダボス会議U30起業家コンテスト最優秀賞。日本酒造中央組合 全国一斉日本酒で乾杯 登壇、クックパッド主催 フードロスイベントcreative cooking battle youth実況・司会 など。