
権力の空白につけこむタリバン
コロナ禍が続いているために日本国民の関心が内向きになっている。マスメディアもそれを反映しているので、国際的に深刻な出来事に対する認識が弱くなっている。
その一つがアフガニスタン情勢だ。米国のバイデン大統領が8月末日までにアフガニスタンから米軍を完全に撤退すると声明し、実際に撤退に着手している。その結果、アフガニスタンに権力の空白ができた。この空白を埋めようとしているのが、イスラム教スンニ派系過激派のタリバンだ。
アフガニスタンの国家歳入においては、関税が大きな比率を占める。タリバンは、国境地域を掌握し、関税徴収を自ら行い、アフガニスタンのガニ政権を「兵糧攻め」にしている。同時に各地で武力攻勢を強めている。
<アフガニスタン各地で5州の州都を制圧した旧支配勢力タリバンは9日、さらに北部サマンガン州の州都アイバクを「支配下に置いた」と宣言した。州関係者も陥落を認めた。今月末までの米軍撤退完了を前に、タリバンは大攻勢を仕掛け、支配地域は2001年の政権崩壊後で最大になった。戦火は全土に拡大し、アフガン政府の対応は後手に回っている。
タリバンは6日、南西部ニムルズ州の州都ザランジを制圧。7日に北部ジョズジャン州の州都シェベルガンを、翌8日に北部の要衝クンドゥズ、サリプル、タロカーンの北部3州都を立て続けに押さえた。
9日には、アイバクの知事公舎や警察施設から「敵を一掃した」と主張。政府の国防筋などによると、地元の有力者がタリバンに投降し、政府軍は郊外まで撤退して戦闘を続けている。
タリバンは4月下旬の米軍撤退開始後、多くの地方を制圧し、都市部に進撃。米シンクタンク「民主主義防衛財団」によると、全土約400地区のうち、バイデン米大統領が完全撤退を表明した4月中旬は約70だった支配地域を、全土の半数以上に及ぶ約220に拡大させた。>(8月10日「毎日新聞」朝刊)
タリバンが狙う「カブール無血入城」
アフガニスタンがこのような状況に陥ることをロシアは早い時点から予測していた。8月初旬、クレムリン(ロシア大統領府)筋から、筆者に以下の情報が寄せられた。
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