
新たに就任した米国の大統領と、ロシアの大統領との初顔合わせは、東西冷戦期から注目されてきた。その理由を、ソ連の専門家で、ブッシュ(子)政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官や国務長官を務めたコンドリーザ・ライス氏は「超大国間の対立が抑制」され、「核戦争を考えてはいない」という証しになったからだと指摘する。バイデン米大統領とプーチン露大統領の初会談は果たしてどうだっただろう。
人権とサイバーで空中戦
バイデン・プーチン会談は6月16日、スイス・ジュネーブのレマン湖畔の小高い丘に立つ18世紀の邸宅「ビラ・ラ・グランジュ」で行われた。「平和の街」と呼ばれるジュネーブを米国側が会談場所に選んだのは、それなりの理由がある。
ロシア当局の反体制派弾圧が国際的な非難を浴び、米国に対するサイバー攻撃は安全保障上の大きな懸念になっている。「冷戦後、最悪の関係」とも言われる。
険悪な状態を改善しなければ、核戦争におびえる日々を過ごした冷戦時代に逆戻りしてしまいかねない、という危機感が両国にあるのは確かだろう。「冷戦思考」を脱し、不安の影を追い払い、少しでも安定した国際社会を築く。そのためには、何が必要か。それを膝詰めで話し合う場とするのが、呼び掛けたバイデン氏の狙いであり、それを受け入れたプーチン氏にも共通の思いがあったとみられる。
会談は、ごく少人数の会合と、それに続く拡大会合を合わせて正味3時間だった。米ホワイトハウスは当初、「4~5時間」に及ぶ可能性もあるとみて、終了後の記者会見の開始予定時刻を「未定」としていた。…
この記事は有料記事です。
残り4293文字(全文4954文字)
投稿にはログインが必要です。
注目コンテンツ