世界時空旅行

怪談「タクシーから消える幽霊」の起源は? ドイツでも語り継がれる定番

篠田航一・外信部記者
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「タクシーから消える乗客」はドイツでも知られた怪談だ。ドイツではヒッチハイクの若者が「消える」場合が多い=ベルリンで2015年1月21日、篠田航一撮影
「タクシーから消える乗客」はドイツでも知られた怪談だ。ドイツではヒッチハイクの若者が「消える」場合が多い=ベルリンで2015年1月21日、篠田航一撮影

 夏。怪談の季節だ。定番の話の一つに「タクシーから消える乗客」がある。運転手が目的地まで走り、「お客さん、着きましたよ」と後部座席を振り返ると、客が消えているといった内容だ。この話、実は日本に限った話ではなく、しかも意外に起源も古い。暑さ厳しき折、今回はそんな怪談の背景を追い、ちょっと涼んでみたい。

 そもそもこの話、日本ではいつごろから有名になったのか。もちろん明確な時期は不明だが、幽霊研究の名著とされる国文学者・池田彌三郎氏(1914~82年)の「日本の幽霊」(中公文庫)には、戦前の昭和5(1930)年ごろの話として東京・青山墓地(霊園)からタクシーに乗った若い女性の話が出てくる。女性は横浜の自宅に着いた。だが現金がないので家から持ってくると言い残し、自宅に入ったまま戻ってこない。しびれを切らした運転手が家の人に尋ねた。家人は言った。それはこの家の娘で、数日前になくなり、青山墓地に埋葬されたという。

 東京都内でタクシーに乗った際、何人かの運転手に聞いてみたところ、皆この手の話は知っていた。でも意見は分かれた。「作り話ですよ」「いえ、似た話を聞いたことがあります」――。

 同じような話は、私がベルリン特派員をしていた2011~15年にドイツでもよく耳にした。…

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篠田航一

外信部記者

 1973年東京都生まれ。97年入社。甲府支局、東京社会部、ベルリン特派員、青森支局次長、カイロ特派員などを経て現職。著書に「ナチスの財宝」(講談社現代新書)、「ヒトラーとUFO~謎と都市伝説の国ドイツ」(平凡社新書)、「盗まれたエジプト文明~ナイル5000年の墓泥棒」(文春新書)。共著に「独仏『原発』二つの選択」(筑摩選書)。