潮流・深層

既成事実化する陰謀論と息を吹き返すトランプ氏

古本陽荘・北米総局長
  • 文字
  • 印刷
演説でバイデン大統領と民主党の批判を繰り広げるトランプ氏=米南部アラバマ州カルマンで2021年8月21日、古本陽荘撮影
演説でバイデン大統領と民主党の批判を繰り広げるトランプ氏=米南部アラバマ州カルマンで2021年8月21日、古本陽荘撮影

 20年に及んだアフガニスタン戦争は、イスラム主義勢力タリバンがアフガンの実権を掌握する形で終わりを迎えた。米国人やアフガン人協力者の退避作戦は大混乱に陥り、タリバンと敵対関係にある過激派組織「イスラム国」(IS)系の「ISホラサン州」(IS―K)による自爆テロも発生して米兵13人が死亡した。

 バイデン米政権の最重要課題である巨額の財政支出を伴うインフラ整備法案成立に向け前進し、機能しないと言われてきた議会が動き出していたところだっただけに、バイデン大統領にとっての政治的ダメージは小さくない。そして、政権の大失態を受けて、息を吹き返しているのがトランプ前大統領だ。

消えない熱狂

 アフガンの首都カブールで混乱が続いていた8月21日。南部アラバマ州カルマンでトランプ氏の集会が開かれた。開催場所は都市からほど遠い、広大な農場だ。だだっ広い草原に、即席のステージや駐車場が設けられた。舗装された場所はなく、すべて土や草の上だ。そんな人里離れた場所に、アラバマ州共和党発表で約5万人、地元の郡保安官事務所の説明で約4万5000人のトランプ支持者が集まった。参加者数を確認する手立てはないが、その場にいた私が見た感じでも万単位で人が集まっていたのは確実だった。

 東海岸に大型ハリケーンが近づいていた影響もあったのか、南部全体の天気も不安定だった。しかし、トランプ氏の登壇が午後7時と予告されていたのに、午後1時にはすでに長蛇の列ができていた。雷雨注意報が発令され、雷が鳴り、一時的に激しい雨が降った。トランプ氏の支持者らの多くは豪雨の中で立ち続けていた。5時間以上、待っていた人が大勢いた。

FOXニュースは信頼しない

 「トランプが私の大統領」。話を聞くと、誰もがそう語った。昨年の米大統領選で目の当たりにしたトランプ集会の熱気はそのままだ。だが、変化もみられた。

 当然のことながら、トランプ氏の集会に来る支持者らは、昨年11月の大統領選で実際に勝ったのはトランプ氏で、民主党による大規模な不正行為があったと信じている。その結果、トランプ氏と蜜月関係にあった保守系のFOXニュースと支持者との間に大きな亀裂が生じているのだ。

この記事は有料記事です。

残り2852文字(全文3761文字)

古本陽荘

北米総局長

1969年生まれ。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)