安倍・菅政権の「たまった腐敗」次期政権で整理されるか

佐藤優・作家・元外務省主任分析官
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2013年当時、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」で、乾杯する安倍首相(左から2人目)と菅義偉官房長官(右)=東京都新宿区の新宿御苑で2013年4月20日(代表撮影)
2013年当時、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」で、乾杯する安倍首相(左から2人目)と菅義偉官房長官(右)=東京都新宿区の新宿御苑で2013年4月20日(代表撮影)

 9月3日、菅義偉首相が自民党総裁選(17日告示、29日投開票)に出馬しないと表明した。これで菅政権は事実上、終焉(しゅうえん)を迎えた。次期首相が国会で指名されるまで、残務整理を行うことになる。

 官僚は、次の首相が誰になるか様子見をするであろう。その間、行政は停滞する。従って、コロナ禍を踏まえた大規模経済支援策についても、次期政権が始動するまで先送りになるであろう。

立案能力が弱くなった各省庁

 菅政権の終焉は、日本の政治に構造的変化をもたらす。また、安倍晋三前政権、菅政権で力を持っていた官邸の幹部官僚の大多数も次期政権では入れ替えるので、過去9年にわたって構築されてきたシステムは瓦解する。

 安倍・菅政権の8年9カ月で、時の首相に気に入られた官邸官僚が権力の実体を持つようになった。官邸官僚は、各省府から優れた官僚を集めた内閣府で、政策の青写真を作ることができる。「霞が関」(中央省庁)は、官邸が提示した青写真に基づいた政策を実施する執行機関となった。

 有識者の中には、次期政権で、権力が官邸官僚から霞が関に移行するという見方をする人もいるが、筆者はそうはならないと見ている。安倍・菅政権の時期に官僚機構が質的に転換してしまったからだ。局長級の幹部も自ら大きな政策を企画・立案した経験がなく、首相官邸が振ってくる課題を処理するという習慣がついている。

 企画・立案能力の弱くなった各省庁からボトムアップで重要政策が首相官邸に上がってくるという構造にはなりにくい。また、コロナ禍で、世界的に行政権力が大統領や首相に集中する傾向がある。次期政権においては、安倍・菅政権のときとは異なる人物が登用され官邸官僚を構成し、権力の中心となるであろう。

強まるポピュリスト的傾向

 菅政権が崩壊した理由は三つあると思う。

 第一は、多くの人が指摘していることであるが、菅氏が自身の派閥を持っていないことだ。政局が厳しくなったときに生死を共にする仲間がいなかった。

 もっとも各派閥に所属する国会議員も衆院で当選3回以下の若手の多くは自らの個人後援会を持っておらず、世論に流される傾向が強いので、派閥の統制に従わない。こういった国会議員が自分の身を守るためだけに活動した結果、政治エリートの世代交代が起きつつある。次期首相が誰になっても世論の動向を気にするポピュリスト的傾向が強まるであろう。

いなかった官僚出身の側近

 第二は、菅氏は官僚を信用せず、政治家と官僚経験のない民間人か…

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佐藤優

作家・元外務省主任分析官

 1960年生まれ。同志社大大学院博士前期課程修了。神学修士。外務省入省後、モスクワの日本大使館に勤務。著書に「自壊する帝国」「私のマルクス」など。7月に毎日新聞出版より「佐藤優の裏読み! 国際関係論」を刊行。