自民党総裁選で期待が叶えられるのか?総選挙を控え見極めたいこと

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
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田中均氏=根岸基弘撮影
田中均氏=根岸基弘撮影

 私は元外交官であり、私の専門領域は国際関係だ。しかし近年日本の外交も他の先進民主主義国と同様、国内の政治の動きにより大きな影響を受けるようになった。

 9年近く続いた自民党の圧倒的な権勢の下で安倍―菅政権は「官邸1強体制」を構築し、異論を排除する政治が定着した結果、外交も独りよがりになってしまっているのではないか。

 米中対立を軸に国際社会が大きく変動していく時、知的議論を活発にし、幅広い選択肢の中から政策が選択されていかない限り、日本の繁栄は危うい。

 私は36年の外交官生活から退官して15年たつが、この間、政治家と接する機会も多く、政官関係や統治の在り方について考えさせられる機会も多かった。半年前にTwitterを始め、3カ月前にYouTubeチャンネルを開設し、国内政治についても頻繁に発信しだしたのは、統治の在り方を変えない限り、強く、しなやかで、積極的な外交もできないという思いが強いからだ。

 自民党総裁選(9月17日告示)は9月29日に予定され、衆院選も今後2カ月ぐらいの間には行われることになるのだろう。この選挙を通じて私が望むこと、変えたいことは少しでも叶(かな)えられることになるのか。

日本の現状についての危機認識を

 本コラムを執筆時点で自民党総裁選には岸田、高市、河野の3候補が名乗りを上げているが、3候補の立候補表明会見からは日本の現状に対する強い危機認識は伝わってこない。

 もっとも、それぞれ安倍―菅政権下で要職を歴任してきたわけで、自身も一部であったこれまでの政権が役割を十分果たしてこなかったとは言えまい。

 しかし、日本はコロナパンデミックの感染終息にはまだ道が険しく、主要国の中でも経済回復が最も遅れている国だ。コロナへの対処やアフガニスタンからの関係者の救出で、成功しなかった原因の一つはこの国の危機管理能力が十分でなか…

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田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。2021年3月よりTwitter開始(@TanakaDiplomat)。毎日リアルタイムで発信中。YouTubeチャンネル(@田中均の国際政治塾)。