Social Good Opinion

Z世代技術チームが挑む、電力とモビリティーの脱炭素化

吉岡大地・株式会社Yanekara代表取締役COO
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吉岡大地さん=下山展弘さん撮影
吉岡大地さん=下山展弘さん撮影

 昨年、菅義偉首相が2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)を目指すという政府目標を掲げました。この目標の達成のために、35年ごろに国内市場での新車販売のすべてを電動車に転換する目標や、30年までに再生可能エネルギーの比率を最大38%まで引き上げるという目標を打ち出しています。50年までのカーボンニュートラルを目指したエネルギーシステム転換が今まさに日本で進行しています。

 2050年カーボンニュートラルという大きな目標を達成するためには、日本の電源構成におけるカーボンフリー電源の割合を1日も早く、1%でも高くしていかなくてはいけないことは明らかであり、日本にある再生可能エネルギーの発電ポテンシャルを最大限活用していく必要があります。

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 しかし、その一方で山を切り開いてのメガソーラー発電所の建設や、地域住民からの支持を得られない大型風力発電計画なども見受けられます。再エネの大量導入は必ず必要です。この普及スピードが遅くなることは私たち将来世代にとって致命傷となる可能性があります。しかし、この大きなエネルギーシステム転換の中には、地域や市民一人ひとりも再エネの生み出す価値を享受できる仕組みも組み込まれていくべきだと私は考えます。前者が再エネの「量」の普及であるならば、後者は「質」の高い再エネの普及です。しかし、「量」と「質」を両立することは容易でありません。私は過去に欧州の市民電力組合を現地で取材したことがあります。市民電力組合の取り組みは理想的だと感じたと同時に、市民主導の再エネの普及スピードではカーボンニュートラルの実現までに時間がかかりすぎてしまうと感じました。

手段としてのスタートアップ

 再エネの大量導入を促進しながら個人や地域の役に立つ電源を社会実装できないか。私は去年東京大学のエンジニア仲間たちと一緒に株式会社Yanekaraというエネルギーテックスタートアップを起業しました。スタートアップは優れた技術やサービスを生み出し、その未来に対して投資を呼び込み、社会実装のスピードを2倍にも3倍にも上げるための手段です。スタートアップの手法を用いて30年までに若い我々世代が求める気候変動問題への解決策を自らの手で創り出したいと考えました。

電気自動車とソーラーカーポート=2021年9月6日、筆者撮影
電気自動車とソーラーカーポート=2021年9月6日、筆者撮影

ローカルでの価値創造と電力システム全体の脱炭素化を両立する

 Yanekaraでは電気自動車(EV)を太陽光で走らせ、車が駐車している間は車載バッテリーを蓄電池として使えるようにする充放電器を開発しています。この充放電器はユーザーだけでなく電力システムが必要とする価値を提供できます。

 Yanekaraの充放電器は太陽光パネルとセットで導入され、屋根の上で作った再エネでEVを走らせます。屋根に太陽光パネルを置くことでユーザーは電気とモビリティーを同時に脱炭素化できるだけでなく、非常時でも必要なエネルギーを最低限自給できるようになります。EVは動く蓄電池であるため災害時は避難所で電力供給を行うことも可能です。さらに、充電と放電のタイミングを最適に制御することでEV導入によって生じる電気代の上昇を抑えることができます。ユーザーと地域に対してエネルギーの脱炭素化と高い防災性という価値を従来と比べて低コストで提供できます。

 ユーザーに対して上記の価値を提供した上でYanekaraの充放電器は電力システム全体の安定供給にも一役買います。電力系統では需要量と供給量(発電量)が常に一致しないと周波数に乱れが生じ、最悪の場合停電が発生します。発電量が天候によって変動する再エネ電源が電力系統に大量に接続された場合、この需給を合わせることが難しくなり、これまで以上に需給計画のズレを調整する電源(調整力)が必要になります。Yanekaraは物理的には分散して存在する多数のEVを群制御できるクラウドシステムを開発しています。これにより多数のEVを仮想的に大きな蓄電池のように機能させ、調整力を作り出します。調整力をより多く持てばより大きい再エネの変動に対応できます。つまり、調整力を増やすことは再エネを増やすことにつながります。

 これは太陽光パネルとEVが生み出す環境的、社会的、経済的価値をきっちりユーザーや地域が享受できるようにした上で、エネルギーシステム全体(「グローバル」)の安定性と脱炭素化に「ローカル」が貢献していくという仕組みです。大規模の電源開発や市民電力組合では実現できなかった「量」と「質」が両立した新しい再エネ普及のあり方だと考えています。「量」も「質」も妥協しないこの技術をスタートアップという手段で素早く社会に実装する。Z世代技術チームの挑戦は始まったばかりです。

Yanekaraのチームメンバー=2021年8月31日、京増顕文さん撮影
Yanekaraのチームメンバー=2021年8月31日、京増顕文さん撮影

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吉岡大地

株式会社Yanekara代表取締役COO

 1997年生まれ。高校卒業後単身渡独し、フライブルク大学に正規入学。2018~19年にイギリスのウォーリック大学に1年間留学し、エネルギー政策について研究。日本のエネルギー業界で複数のインターンを経験した後に株式会社Yanekaraを共同創業。