自民党総裁選 コロナ対策を戦略的に考えられる候補は

小川和久・静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト
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小川和久氏=北山夏帆撮影
小川和久氏=北山夏帆撮影

 自民党総裁選挙の候補が出そろい、論戦を繰り広げている。私は国民の生命に関わるコロナ対策を通して、各候補が合格点の水準に達しているかどうかを採点することにしている。

コロナ対策は危機管理体制

 危機管理の要諦は「必要なことを適切なタイミングで実行すること」にある。訳知り顔に繰り返される「最悪の事態に備える」だけでは畳の上の水練の域を出ず、国民を守ることはできない。

 国外からの感染症の侵入に対しては、最優先されるべきは危機管理体制の迅速な構築である。入国制限を徹底し、感染拡大を防止するモデルを描き、簡易型専用病院の緊急設置と全国の医療従事者の適正配分を実行に移すとともに、ワクチン開発への政府資金の投入や接種優先順位を策定していく。

 そして感染の抑制が基準を満たしていることを確認しながら社会・経済活動を再開していくのだ。以上は、ほぼ同時進行で行われる必要がある。これが求められる合格点の水準である。

「医療崩壊を防ぎ、経済を殺さない」

 コロナの第6波以降、あるいは新たな感染症の発生に備えるとき、日本をはじめ各国にとって参考になるのはイスラエル・ヘブライ大学のアムノン・シャシュア、シャイ・シャレヴ=シュワルツ両教授が昨年4月に出した提言「医療崩壊を防ぎ、経済を殺さない方法」にある次の視点だろう。

 シャシュア教授らは、①新型コロナウイルスは未知の部分が多い②疫学的な解析だけでは困難に直面する③感染のピークはいつで、発症していない感染者数が何人なのか、把握できない④ロックダウンや緊急事態宣言を解除し、経済活動の自粛を解いた結果を疫学的な計算では見通すことはできない、を前提に危機管理のモデルを描いた。…

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小川和久

静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト

 1945年生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕内閣ではドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。『フテンマ戦記基地返還が迷走した本当の理由』『日米同盟のリアリズム』など著書多数。