「人権侵害制裁法」の導入を

土井香苗・国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表
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オンラインを使ってのタウンミーティングで、参加者の質問に答える(奥左から)河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行=東京都千代田区の自民党本部で2021年9月23日、小川昌宏撮影
オンラインを使ってのタウンミーティングで、参加者の質問に答える(奥左から)河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行=東京都千代田区の自民党本部で2021年9月23日、小川昌宏撮影

 日本はアジアの中に、人権尊重をルールとする民主主義国国家として存在している。しかし、そのアジア地域に目を向けると、人権侵害多発地域で、人びとが塗炭の苦しみにあえいでいるのが実態だ。激しい弾圧にさらされている中国のウイグル民族やチベット民族の人びと、軍事政権に立ち向かうミャンマーの人びと、危険を承知で自由で公正な選挙を求めて立ち上がるカンボジアの人びと……。

 しかし、歴代政権の外交政策で、人権や民主主義の尊重の推進に重点が置かれたことはほとんどなかった。日本の首相はほぼ例外なく、苦しむ人びとの側ではなく権力者の側に立ってきた。

 日本のこうした立場の転換が必要だ。

 近年、欧州連合(EU)、米国、カナダ、英国など多くの民主主義国で、海外の人権侵害実行者に対して入国禁止や資産凍結などの制裁を課す、人権侵害制裁法(「グローバル・マグニツキー法」とも呼ばれる。2016年に米国で初めて導入)が制定されている。日本は、主要7カ国(G7)で唯一、こうした法律を持っていない。

 しかし、希望はある。国会議員のなかで、こうした「人権侵害制裁法」の検討がはじまっているのだ。そしてこの5月、超党派の「人権外交を超党派で考える議員連盟」では、重大な国際人権法違反を犯している人物の資産凍結や入国拒否を可能にする「人権侵害制裁法案」の概要が示された。

 また、同じく5月には自民党・外交部会の「わが国の人権外交のあり方検討プロジェクトチーム」が菅義偉首相に対し、「人権侵害制裁法」の制定に向けた検討を開始するよう提言した。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは他団体等とともに、自民党総裁選にあたり、4人の候補者全員に、自民党総裁になった場合、「人権侵害制裁法」導入を進めるか、アンケートを行った。

 結果は、岸田文雄氏、高市早苗氏、野田聖子氏が「人権侵害制裁法」導入を支持。河野太郎氏は、「人権侵害は許されない」としたものの回答を「差し控え」た。

自民党総裁選挙立候補者への「人権侵害制裁法」導入及び人権外交政策に関するアンケート結果(回答順)

 <Q1>あなたは、「人権侵害制裁法」を支持しますか? あなたが総裁に選ばれた場合には、日本でもいわゆる「人権侵害制裁法」の導入を進めますか?

 <Q2>あなたのその他の具体的な人権外交推進策についてお答えください。

河野太郎行政改革担当相

 <Q1> 人権侵害は許すべきではない。その上で行政府の長を目指す立場で、立法府である国会において審議されるものについての評価は差し控えたい。

 <Q2> 独裁や監視を強めようとする国々に…

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土井香苗

国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表

 1975年生まれ。98年東京大学法学部卒業。日本での弁護士活動を経て、2008年から現職。日本の国内および外交政策において、人権が優先課題となるよう活動している。