日本は日韓関係の改善に動き出すべき局面だ -韓国国民の意識の変化をどう受け止めるか

工藤泰志・言論NPO代表
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工藤泰志氏=竹内紀臣撮影
工藤泰志氏=竹内紀臣撮影

政府だけでは解決できないことがある

 外交は政府が行うものだが、政府だけでは解決できないことがある。私が、この十数年、中国や韓国との民間外交や外交課題での民間対話を行っているのは、そのためである。

 国民間には、相手国への強い反感と不信に伴う感情悪化があり、暴走することもある。その結果、日中と日韓では政府間外交は断絶に近い状況に何度も追い込まれた。その空白を誰が埋め、課題に取り組むのか。それが、私が民間対話に取り組む問題意識だった。

日韓関係の修復に向けて

 私が、この立ち位置から今回、問題提起すべきだと考えたのは両国関係が、事実上停止している日韓関係である。

 日本と同じく米国との同盟関係であり、民主主義という共通の価値を持つ2国間は、この数年、反目を続け、政府間にお互い強い不信の気持ちがある。米中対立の深刻化で北東アジアの緊張が深まる中で、この反目の状況をいつまで放置し続けるのか、それが、日本の政治に対する私の問いである。

 私が、今こそが、関係改善に乗り出すタイミングだと考えるのは、日本の首相が代わり、韓国の大統領も来年3月に選挙というリーダーの交代が理由ではない。この政府の対立下においても両国民の意識、とりわけ韓国民の意識に両国関係の今後の土台として、我々が注目すべき新しい全面的な変化が見られたからだ。

日本の外交が、この地域の安定と発展を目的にするのならば、この変化を受け止め、修復に向けた準備を始めるべきなのである。

韓国側に新しい変化

 私たちが9月28日に公表した日韓の最新の世論調査結果(今年9月の実査)。日本の多くのメディアは、政府間の冷え込んだ状況が、国民感情に悪影響をもたらし、出口が見えていないと伝える。日韓両国民には依然として相手国政府の行動への強い不信がある。その状況は確かに今回の調査でも変わってはいない。

 2018年の韓国大法院(最高裁)の判決が、徴用工の請求権の問題での日韓合意を覆す判断をしており、日本人の多くは、韓国との国交を樹立した1965年の日韓基本条約が骨抜きにされ、日韓関係の基礎が壊れはじめたと実感した。

 一方で、韓国には2019年の日本政府が取った輸出規制はその報復だと考え、日本政府には対抗すべきだという反発がある。そうした両国民の意識が、いまだに今回の調査結果に色濃く出ている。こうした状況が、新政権が両国で実現しても改善は期待できないとの両国民の意識を生んでいる。しかし、今回の調査で明らかになった新しい変化はこれとは全く別の動きなのである。

米中対立が…

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工藤泰志

言論NPO代表

  1958年生まれ。横浜市立大学大学院経済学修士課程卒。東洋経済新報社で『論争東洋経済』編集長等を歴任。2001年11月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。その後、選挙時のマニフェスト評価や政権の実績評価、東アジアでの民間外交に取り組む他、世界の有識者層と連携した国際秩序の未来や民主主義の修復等、日本や世界が直面する課題に挑む議論を行っている。2012年3月には米国の外交問題評議会(CFR)が設立した世界23カ国のシンクタンク会議「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」に日本から唯一選ばれた。