世界時空旅行

ドイツに今も根強い「人狼」の影 背景にオオカミ増加か 人間との見分け方は?

篠田航一・ロンドン支局長
  • 文字
  • 印刷
北半球に広く分布するハイイロオオカミ=米ミネソタ州の野生生物科学センターで2004年7月16日、AP
北半球に広く分布するハイイロオオカミ=米ミネソタ州の野生生物科学センターで2004年7月16日、AP

 ツチノコや人面犬など、日本では時折、異形の生き物が子供たちの話題となる。私が2011~15年のベルリン特派員時代、幼い娘と一緒に暮らしていたドイツでも「えたいの知れない」生き物は常に子供の人気だった。中でも根強かったのが、突然オオカミに変身する「人狼(じんろう)」、つまりオオカミ男である。

 オオカミは日本では絶滅した動物だが、ドイツでは21世紀に入って数が増えており、今も存在感抜群なのだ。オオカミはなぜ増えたのか。なぜ人狼伝説は生き続けるのか。今回はオオカミを巡る話を考えてみたい。

息を吹き返した伝説

 人狼を巡る奇妙なうわさが、20世紀後半のドイツで広まった。この話を調査し、08年に「モアバッハの怪物」という本を出版したのが、マインツ大学民俗学研究員のマティアス・ブルガルト氏だ。

 「1988年、旧西ドイツの駐留米軍基地の近くにあるモアバッハの森に、後ろ脚で人間のように立つ巨大なオオカミ男が出たという話が広まりました。高さ3メートルのフェンスを越えて逃げたのを複数の米兵が目撃しましたが、軍用犬も怖がって後を追わなかったそうです」

 もともとモアバッハ一帯は森林地帯で、古来、オオカミ男伝説が語り継がれていた場所だった。だが、なぜ再び伝説が息を吹き返したのか。

背景には兵士の心…

この記事は有料記事です。

残り1439文字(全文1971文字)

篠田航一

ロンドン支局長

 1997年入社。甲府支局、東京社会部、ベルリン特派員、青森支局次長、カイロ特派員などを経て現職。著書に「ナチスの財宝」(講談社現代新書)、「ヒトラーとUFO~謎と都市伝説の国ドイツ」(平凡社新書)、「盗まれたエジプト文明~ナイル5000年の墓泥棒」(文春新書)。共著に「独仏『原発』二つの選択」(筑摩選書)。