政府も野党も欠けていた有事対応の発想

塩崎恭久・元官房長官
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塩崎恭久氏=大貫智子撮影
塩崎恭久氏=大貫智子撮影

コロナ問題の核心は国家のガバナンス

 1993年に初当選した後、90年代後半に当選同期の安倍晋三氏らと政策研究グループ「NAIS(ナイス)の会」を結成した。以来、社会保障問題や行政改革問題など幅広い政策課題に取り組んできた。

 新型コロナウイルス感染症問題の核心は、社会保障の話ではない。国家のガバナンスの問題だ。明治以来、日本の感染症対応は、都道府県や保健所など一貫して地方任せだった。法的な指揮命令系統がなく、厚生労働相は保健所に何の影響力も持っていなかった。

 このため、私が本部長を務めた自民党の行政改革推進本部は2020年6月、感染症危機対応を国の責務として位置付けたり、有事の際の指揮命令系統を明確化したりするよう、関連法制の改革案をとりまとめた。

 ようやく21年6月の「骨太の方針」でこうした内容が一部盛り込まれ、一歩前進した。ところが、与党は通常国会を会期延長せずに閉会させてしまい、法制化できなかった。その結果、なるべくしてなったのが今夏の第5波だった。

 このままでは、冬に第6波が来たら対応できない。これでは有事の発想とは言えない。菅義偉前首相は4月、緊急事態宣言を発令する際の記者会見で、緊急事態の対応について「落ち着いてから特別措置を作ればいい」と述べた。火事の時に、「鎮火したら水を掛けよう」と言っているようなものだ。落ち着いたらではなく、落ち着くように頑張らなければならなかった。ワクチンの1日100万回接種達成を誇るよ…

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塩崎恭久

元官房長官

 1950年生まれ。日銀を経て、93年衆院初当選、95年参院初当選。大蔵政務次官、副外相、官房長官、厚生労働相などを歴任。衆院愛媛1区。衆院当選8回、参院当選1回。自民党。2021年衆院選に出馬せず、引退。