野党共闘の現在地

白井聡・京都精華大学人文学部専任講師
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白井聡氏=山田尚弘撮影
白井聡氏=山田尚弘撮影

 今回の総選挙は、自公政権打倒を目指す野党の本格的な選挙協力が成立する初めての選挙となる。

 私は、2016年に上梓(じょうし)した著書「戦後政治を終わらせる」(NHK出版新書)において、自民党とそれが取り仕切る日本政府が、新自由主義への傾倒と異様な対米従属への傾斜によって、民主主義を蔑(ないがし)ろにしつつ、既得権益を死守するために腐朽した体制をなりふり構わず維持していると指摘した。そして、そこから脱却するためには、第二自民党にすぎぬもの――民主党政権の末期はまさにそれになってしまった――ではない政治勢力が力を結集させねばならない、と説いた。

 それから5年。ようやくついに、私が主張し続けたものに近いものができ上がってきた。しかしながら、率直に言って、喜ばしさは感じない。ここまで時間がかかったことの原因は何なのか。この共闘体制が新型コロナ対策の失敗で不正と無能と腐敗をさらけ出した「体制」を打倒できるものなのか、という点に疑問をいだくからだ。

「第二自民党」

 時系列を振り返ってみよう。私が提案した政治勢力の結集は、17年の衆院選の際に大混乱に陥った。前原誠司民進党代表(当時)は、いったんは共産党との選挙協力路線に傾いていたが、小池百合子東京都知事が「希望の党」を立ち上げ、民進党との合併を持ち掛けるや否やそれに呼応。しかし、いわゆる小池氏の「排除します」発言により「希望」ブームは失速、政権交代の機運は消えた。

 私は小池氏の「排除」発言を実は高く評価している。政治理念の全く異なる者同士がひとつの政治勢力になるのは、野合でしかない。その意味で、15年の新安保法制による日米安保体制強化と改憲の肯定、脱原発を公約から外すことをリベラル左派系政治家に踏み絵として迫った小池氏の言動は、政治の原理原則の観点からして正しい。要するに、小池氏は、民進党の面々に対して完全に第二自民党化するよう迫ったのである。

時間がかかった「器」の成長

 その結果、枝野幸男氏をはじめとする排除されたリベラル左派系民進党議員により立憲民主党が結成された。この勢力は、原理原則の次元で第二自民党と化すことを拒んだ政治家集団であり、その性格があまりに曖昧だった民進党(旧民主党)の勢力が自公政権に代わる本来の意味での選択肢へと生成する器となりうるはずだった。

 しかし、この器の成長には時間がかかった。希望の党騒動に起因する感情的軋轢(あつれき)の問題もあったが、最大の困難は共産党との連携にあった。立憲民主党単体では「器」となり得ず、掲げる理念の方向性も似てきている以上、共産党との連携の不可避性は自明であったはずだった。だが実際には、連合の反対、そのしがらみにより、17年の衆院選、19年の参院選における選挙協力は限定的なものにとどまったため、自公政権はやすやすと権力維持に成功した。

遅れた合意形成

 立憲民主党による国民民主党の大部分の合流を経て、衆院議員の任期が迫るなか、野党間の政策協定合意が市民連合の仲介によって成立したのは、ようやく今年の9月8日だった。…

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白井聡

京都精華大学人文学部専任講師

 1977年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。専攻は政治学・社会思想。著書に「永続敗戦論――戦後日本の核心」(太田出版)、「未完のレーニン――<力>の思想を読む 」(講談社選書メチエ)、「『物質』の蜂起をめざして――レーニン、<力>の思想」(作品社)、「国体論――菊と星条旗」(集英社新書)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)、「主権者のいない国」(講談社)など。