
10月23日付毎日新聞朝刊は「台湾防衛『米に義務』 バイデン氏発言、意図不明」との見出しで21日に米CNNが生中継した対話集会でのバイデン米大統領の発言を報じた。従来米国は台湾有事の際に軍事介入する意図を明確にしない「曖昧戦略」を維持してきたが、記事は今回大統領がこの「曖昧戦略」を変更したか否かは「不明確だ」としている。
一方、他の本邦メディアは大統領の発言内容につき米国の「約束になっている」「誓約である」「責任である」などとさまざまに翻訳し報じたため、情報が錯綜(さくそう)・混乱した。
当初は筆者も「なぜバイデンは同じ日に台湾について何種類も異なる発言をしたのか」などといぶかったほどだ。それにしても、天下の大マスコミ報道でなぜこんな混乱が生じたのだろうか。
たかが英訳、されど英訳だ。今回はバイデン大統領の「台湾防衛」発言に関する報道が錯綜した理由を探るべく、21日に米CNNテレビが企画し生放送したタウンホールミーティングでバイデン大統領が実際に発言した内容を詳しく紹介しながら、大統領の発言の真意を「深読み」する。毎度のことながら、以下はあくまで筆者の個人的分析である。
バイデン発言の正確な内容
バイデン大統領の発言については、ホワイトハウスのウェブサイトに公式記録がある。
【問】中国は超音速ミサイルを打ったが、大統領は軍事的に対峙(たいじ)するため何をするのか。台湾を守ると誓約できるのか。…
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1953年生まれ。外務省日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを経て2005年に退職。立命館大客員教授、外交政策研究所代表なども務める。近著に「AI時代の新・地政学」。フェイスブック「Tokyo Trilogy」で発信も。