
この国はずっと、子どもを後回しにしてきた。政治家はよく「子どもは大切だ」と言う。しかし腹に落ちて、その切実さを分かっている政治家は非常に少ない。
子どもに投資すれば、将来3倍ぐらいになって社会に返ってくることは、北欧などの経験からもはっきりしている。しかし、日本の社会保障給付費のなかで、児童・家族関係給付費は、高齢者関係給付費の17分の1程度しかない。
子どもは投票をしない。政治家はどうしても自分に票を入れてくれる人のほうに顔が向く。だから子どもを代弁する人が議員になることが必要だ。
政治の世界では、意思決定をする立場にいる人は年齢の高い男性が多い。選挙権年齢が18歳に引き下げられたが、被選挙権年齢も引き下げるべきだ。政治にもっと若者と女性が入りやすいようにしなければならない。
担当閣僚になった野田聖子さんをはじめ、自民党のなかで「こども庁」を作る動きが出てきたことには期待している。自民党の若い議員が熱意を持って取り組んでいる。野党の若手議員と共に、超党派の議員立法で実現することができれば一番いいと思う。
「子どものため」はみんなのため
現役時代に街頭演説などで子ども政策の話をすると「子どもの話ではなく高齢者の話もしてほしい」と高齢者に言われることがあった。しかし子どもへの政策を充実させていくことで、すべての人が暮らしやすい社会になっていく。若い人が安心して子どもを産み育てることのできる社会は、高齢者にとっても生きやすい社会になる。
けれども日本の制度はやはり「子ども第一」にはなっていない。男性が大黒柱で、女性が支えることを前提とした家族中心の制度から抜け出せない。これだけ人口減少が言われ、現役世代の働き手が減っているなかでは、男女にかかわらず自分の能力に合った働き方をする社会のほうが国全体としては明らかに望ましいのに、なかなかそうはならない。結局は男性が正社員で女性が非正規であり、女性の雇用は好不況の調節弁にされている現状がある。
本当はバブルが崩壊した時に、男性中心の働き方全体を見直し、雇用は維持して労働時間を減らす方向に行くべきだった。しかし、実際にはそうはならず、雇用を減らして中核としての正社員に男性を残し、周辺としての非正規を女性で補うという方向になっていった。
日本の男女の賃金格差は国際労働機関(ILO)からも厳しく指摘されている。正社員同士でも女性は男性の7割程度(2019年、74.3%、厚生労働省賃金構造基本統計調査)の所得しかない。…
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