櫻田淳さんのよびかけ

<ご意見募集>中国との確執の焦点「台湾危機」に日本の関与は

櫻田淳・東洋学園大教授
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櫻田淳氏=根岸基弘撮影
櫻田淳氏=根岸基弘撮影

 このたび、筆者が各位に呼び掛ける議論は、滝野隆浩記者による渡辺金三元陸将補へのインタビュー記事<軍事情報からみた台湾問題の「逆説」>を踏まえて、台湾情勢への日本の関与を問うものである。

中国の「柄に合わない」台湾侵攻

 滝野記者のインタビュー記事中、渡辺元陸将補は、「狭い所で130キロ、広い所は200キロを超える海岸線の長い海峡。潮の流れは速いし海底は浅いので潜水艦の運用はなかなか難しい。加えて冬場には強風が吹き濃い霧も発生するので、航空機の運用も困難」という地勢、気象上の条件を指摘し、その条件を踏まえた上で、「中国軍側が侵攻に必要な圧倒的な兵力を保持しているとはいえない」と結論付けている。

台湾の防空識別圏に進入した中国軍の戦闘機「殲16」の同型機=台湾国防部提供
台湾の防空識別圏に進入した中国軍の戦闘機「殲16」の同型機=台湾国防部提供

 なお、これに筆者が付け加えるとすれば、古来、中国は軍事上、渡海作戦に踏み切った事例がまれである。台湾侵攻というのは、中国の軍事的特質から見れば、最も「柄に合わない」ものなのではないか。

 そして、渡辺元陸将補は、中国が台湾への軍事侵攻に踏み切るケースを「①軍事的勝算がある状態にした後に侵攻する場合」と「②軍事的勝算がないまま侵攻する場合」の二つに分けた上で、次のような所見を付している。

 「①は米国の軍事力との比較になるが、中国が軍事力を増強しているとしても、当然米国は現在でも中国の3倍程度の速度で増強しており、さらに西側諸国がそこに協調してくるようになれば、冷戦期のソ連のように中国の経済が、先に疲弊するリスクがある。②については注意を払う必要があると考える。たとえば、これまで党が掲げてきた国家的結節時期までに平和的統一のめどがつかないケースや、国内で統制が取れないような重大事態が発生したときには、人民の目を外に向けて国内の団結を図るために台湾を侵攻するという可能性がある」

「勝算」がなくとも

 確かに、中国が台湾に侵攻する際の政治的環境は、「人民の目を外に向けて国内の団結を図る」というものになる方が蓋然(がいぜん)性が高い。それが、たとえ「勝算がない」ものであったとしても、日米開戦時の日本の事例に触れるまでもなく、そうした「勝算のない」軍事行動が行われる可能性は、冷静に見ておくべきなのであろうと思われる。その余波にどのように対応するかが、日本の「台湾有事」対応の本質になるのであろう。

台湾の防空識別圏に進入した早期警戒管制機「空警500」の同型機=台湾国防部提供
台湾の防空識別圏に進入した早期警戒管制機「空警500」の同型機=台湾国防部提供

米国でも欧州でも

 折しも、10月20日、欧州議会は、台湾との関係強化を欧州連合(EU)に求める報告書を、賛成580、反対26、棄権66の圧倒的賛成多数で可決した。ジョセフ・R・バイデン(米国大統領)は、台湾が中国から攻撃を受けた際の米国の台湾防衛義務を問われて、「もちろんだ。その責任がある」と述べた。

 バイデンの発言は後に修正されたとはいえ、欧州諸国でも米国でも、「台湾の政治上の地位」を護持し支援しようという「空気」は、確実に醸成されつつある。台湾は今や、日米豪加各国や西欧諸国のような「西方世界」諸国と中国の確執が鮮明に表れる「国際政治の一つの焦点」になっている。

バイデン米大統領=米ワシントンで2021年10月21日、AP
バイデン米大統領=米ワシントンで2021年10月21日、AP

日本周辺の問題にとどまらない

 日本にとって、台湾情勢の行方は、日本の安全保障に直結する案件である。しかし、それ以上に考えなければならないのは、それへの対応が、「西方世界」諸国の中での日本の立ち位置を問うものになっているということである。

 台湾情勢への対応は、既に日本周辺の問題にとどまらない広がりを持つ案件になっているのである。これをどのように考えるべきか。読者各位の真剣なる所見を待望する。

 ※編集部注 みなさんから寄せられたコメントは櫻田さんに読んでいただき、ご意見をまとめていただいて、政治プレミアで公開します。

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櫻田淳

東洋学園大教授

1965年生まれ。専門は国際政治学、安全保障。衆院議員政策担当秘書の経験もある。著書に「国家の役割とは何か」「『常識』としての保守主義」など。フェイスブックでも時事問題についての寸評を発信。