接戦区を増やしたが勝てなかった野党共闘 2021年衆院選の分析

菅原琢・政治学者
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立憲民主党執行役員会で辞意を表明する枝野幸男代表=衆院第2議員会館で2021年11月2日、竹内幹撮影
立憲民主党執行役員会で辞意を表明する枝野幸男代表=衆院第2議員会館で2021年11月2日、竹内幹撮影

 10月31日に行われた第49回衆院選では、自民党が議席を減らし、公明党を合わせた与党全体では300議席を割ったものの、安定多数を守り政権を維持することになった。今回と次回は、この2021年衆院選について分析する。

 まず今回は、特に接戦区に着目して分析を行いたい。

「意外性」を生んだメディアの事前予測

 今回の衆院選の結果については、自民議席減は事前に予測された通りであったが、その内容は予想とは異なった。多くのマスメディアの情勢報道では、小選挙区で立憲民主党が議席を大きく伸ばし、それにより自民党が議席を減らすとした。しかし、小選挙区における立憲民主党の伸びは限定的であった。

 前回2017年衆院選の小選挙区において野党側は、立憲民主党18、希望の党18、共産党1、社民党1、野党系無所属21、維新の会3の、計62議席を獲得した。一方21年衆院選では、立憲民主党57、国民民主党6、共産党1、社民党1、野党系無所属6、そして維新の会16の計87議席を獲得した(両年とも追加公認含む)。

 野党側の小選挙区での議席増は25議席のうち、過半の13議席は維新の会によりもたらされ、他の野党の伸びは12議席にとどまったのである。

 また前回は比例代表で立憲民主党は37、希望の党32の議席を獲得したが、今回立憲民主党は39議席、国民民主党は5議席の獲得にとどまった。これに対して維新の会は8議席から25議席へと獲得議席数を増やした。集計上は、立憲民主党と国民民主党は希望の党の議席を引き継げず、その多くが維新の会へと流れるような見た目となった。

 これらの結果が各社の情勢報道や評論家らの予想とは大きく異なったために、この選挙結果は意外と受け取られ、立憲民主党は「敗北」とされた。ただその意味では、この意外性の大部分はこれらメディア側が作り上げた部分が大きいとも言える。

 衆院選公示日に公開した前回の記事<数字で示せる野党共闘の効果>では、野党候補を統一しても当選にこぎつける選挙区は限定的と結論付けた。そもそも野党の支持率が高くないため、協力したところで与党候補との差を逆転できる選挙区の数が少ないことがその理由である。

 言い換えるとマスメディア側の事前報道は、現実的な水準を超えた議席増の期待を野党に集めたものと言える。したがって、この期待と現実の差を生み出した、マスメディアの結果予測が今回の衆院選を理解するカギとなる。

一部のマスメディアの結果予測はどのように外れたか

 ここで、期待を生み出したメディアの結果予測について簡単に分析しておきたい。

 立憲民主党の伸長を予測したメディアの事前予測報道が外れたのは、予測が難しい選挙区が増えたためとされる。実際、表1に示すよ…

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菅原琢

政治学者

1976年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授など歴任。専門は政治過程論。著書に「世論の曲解」、「データ分析読解の技術」、「平成史【完全版】」(共著)、「日本は「右傾化」したのか」(共著)など。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」https://kokkai.sugawarataku.net/を運営。