潮流・深層

脱「トランプ党」を模索する共和党の「第三の道」

古本陽荘・北米総局長
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選挙集会で支持者を前に演説するヤンキン氏=バージニア州フェアファクスで10月30日、古本陽荘撮影
選挙集会で支持者を前に演説するヤンキン氏=バージニア州フェアファクスで10月30日、古本陽荘撮影

 11月2日に投開票された南部バージニア州の知事選は、終盤で追い上げた野党・共和党のグレン・ヤンキン候補(54)が、当初は優勢だった与党・民主党のテリー・マコーリフ氏(64)を逆転し、勝利を収めた。1年後に迫った米中間選挙の前哨戦とみられていたため全米の注目を集め、想定外の敗北に民主党やバイデン政権は大きな衝撃を受けている。

 なぜ、ヤンキン氏が勝利したのか。その選挙戦術を分析すると、共和党に「親トランプ」でも「反トランプ」でもない「第三の道」があることが浮き彫りになる。大統領退任後も党に大きな影響力を持つトランプ氏の下、「トランプ党」に化したと評される共和党だが、党再建に向け一筋の光明が差したようにも見える。

「現実から遊離した」民主党

 両陣営の選挙戦は対照的だった。民主党のマコーリフ氏は、2014年から18年まで、バージニア州で知事を務めており、知名度は抜群だ。クリントン元大統領夫妻と親しく、民主党のために選挙資金を集めるファンドレイザーとして知られていた。民主党の全国組織である党全国委員会(DNC)の委員長を務めた後、13年の同州知事選に立候補した。

 今回の州知事選では、バイデン大統領、ハリス副大統領、オバマ元大統領らを呼び、大規模集会を開いた。ただ、選挙の中心は民主党の「お家芸」である労働組合などの組織を使った戸別訪問だった。一軒一軒、住宅街を回り、有権者を説得して回る伝統的な「ドブ板選挙」だ。

 初代大統領のジョージ・ワシントンや第3代大統領のトーマス・ジェファーソンを輩出したバージニアは、もともとは典型的な南部の州で、保守的な土地柄だ。だが、首都ワシントンに近い北部や州都リッチモンド周辺などでは人種構成が多様化し、学歴の高い有権者が流入。民主党に有利な環境に変化してきた。昨年11月の大統領選では、民主党候補だったバイデン大統領が10ポイント以上の差で、共和党候補のトランプ前大統領に勝っており、組織がフル稼働すれば、勝利はそれほど難しくないという見方が支配的だった。

 こうした背景から、マコーリフ陣営は、1年前の大統領選と同じような展開になることを期待し、ヤンキン氏とトランプ氏を結び付ける戦略をとった。テレビの選挙CMでは、トランプ氏が「扇動した」連邦議会乱入事件の映像を使い、ヤンキン氏が当選すれば「再びあの時代に戻る」と訴えた。マコーリフ氏は、ヤンキン氏を「トランプキン」と呼び、「トランプ氏の愛玩犬」とやゆした。「反トランプ」を軸にして州知事選の国政化を狙った。

 これに対し、共和党のヤンキン氏は、選挙の争点を「キッチン・テーブル・イシュー」と呼ばれる生活に密着した課題に絞った。公約に掲げたのは、食料品などにかかる消費税「グローサリー税」の廃止、公立学校改革、治安強化、退役軍人への支援拡大などだった。

 トランプ氏は、ヤンキン氏を推薦すると表明していたが、ヤンキン氏は応援の要請はしなかった。トランプ氏に限らず、ほかの共和党の有力者に対しても集会などへの応援は求めず、選挙戦の「ローカル化」を徹底した。実際には、州外から共和党系大口献金者の献金を集めていたが、表には見えず、国政と一線を画した選挙戦という印象になった。

 勝利宣言でも、国政には一切触れず、「みんなで一緒にバージニアの針路を変えよう」と州政府改革への意欲を語ることに終始した。マコーリフ陣営と同じ土俵には乗らないように、トランプ氏への言及は質問された場合だけで、批判もしなければ、礼賛もしないという姿勢を貫き、トランプ氏と一定の距離を置いた。

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古本陽荘

北米総局長

1969年生まれ。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)。