「偉大なるイエスマン」が語る 幹事長は裏表紙

武部勤・元自民党幹事長
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武部勤氏=須藤孝撮影
武部勤氏=須藤孝撮影

そんたくは大切

 私が自民党幹事長だった時は、小泉純一郎首相(当時)のもとで「偉大なるイエスマン」と言っていた。物を言わない「イエスマン」と批判もされたが、幹事長の役割というのはそういうものだ。「そんたく」というと悪いことのようになってしまったが、大切なことだ。「先意承問(せんいじょうもん)」とも言う。相手が言う前に察するということだ。

 総理・総裁が今何を考えているか、自分にこう言った真意はどこにあるか。それを読む力と応える能力が無ければ、幹事長の役割は果たせない。

任せるところは任せた小泉首相

 幹事長当時、森喜朗元首相(当時は前首相)とやりあったことがある。私は「偉大なるイエスマンですから、(小泉)総理に言ってください」と言ったら、「ばか者」と言われたが、しかし、自民党には総裁である首相には簡単に直訴してはならないという伝統がある。森さんはあきらめて、回れ右をして帰って行った。「イエスマン」にはそういう効用もあった。

 では小泉さんが全部決めていたかというとそんなことはない。小泉さんは官邸主導だったと言われるが、決してそうではない。むしろ幹事長に全部任せて、余計なことを言わないようにしていた。

 小泉さんのところに小泉さんが異議があるであろう案件を持っていく。それも一つではなく二つか三つ、まとめて持っていく。見ると不満顔だ。いいですか、と聞くとまかせるから皆と相談してしっかりやってくれとひと言。わかりました、と帰ってくる。

 すると後で、小泉さんが記者の取材に「幹事長がそう言うんだからそうなんだろう」と答えている。記者が私のところに「小泉さんは『そうだ』と言わないのだが、どういうことか」と聞きに来る。私が「総理の言った通りだ」と言うと記者は困っていて、結局記事にならない。

 政策には時間が必要な場合がある。そうやって時間を稼いでいた。首相と幹事長の関係というのはそういうものだ。だから、首相はしっかりした幹事長に全権を託したほうがいい。

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武部勤

元自民党幹事長

 1941年、北海道斜里町生まれ。北海道議、渡辺美智雄通産相秘書を経て、86年衆院初当選。運輸政務次官、農林水産相、衆院議院運営委員長、自民党幹事長などを歴任した。衆院当選8回。2012年衆院選に出馬せず、引退した。