日本外交の現場から

韓国文化好きが増えれば歴史問題は解決するのか

大貫智子・政治部記者
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国連総会のイベントに参加したBTSのメンバーたち=米ニューヨークの国連本部で2021年9月20日(代表撮影)
国連総会のイベントに参加したBTSのメンバーたち=米ニューヨークの国連本部で2021年9月20日(代表撮影)

 今の日本の若者には、韓国文化好きな人が多い。だから、そのうち日韓関係は自然に改善するはずだ。心配はいらない――。最近、日韓関係に関する有識者セミナーに出席すると、こうした楽観論をしばしば耳にする。出席者は中高年のベテランが大半で、実際に若い人たちに話を聞いたうえで述べているわけではないようだ。特に韓国側でこのような期待が高まっている印象がある。

 その見立てが正しいのかどうか知りたくて、私はソウル駐在を終えて帰国したこの3年あまり、日本のさまざまな学生に尋ねてきた。取材を重ねていくと、学生たちも、複雑な感情を抱えている様子が浮き彫りになった。キーワードは、この夏に話題となったある書のタイトルにある「モヤモヤ」だった。モヤモヤの実態とは。日韓関係の未来は、本当に明るいのだろうか。

文化と政治のはざまで「モヤモヤ」する若者たち

 若者や女性を中心に日本で韓国文化が浸透していることは、既に広く知られており、改めてデータなどを用いて説明する必要もないだろう。それだけに、同じような思いや疑問を抱き、題名にひかれて手に取った読者が多かったに違いない。私もそんな一人だった。一橋大の学生5人が、日韓関係に関する率直な思いや素朴な疑問を語り合った「『日韓』のモヤモヤと大学生のわたし」(大月書店)である。2021年7月に刊行されたこの著作は現在3刷に至り、一時は朝鮮半島関連の分野でベストセラーとなった。

 執筆に携わった学生たちの話を聞きたいと思っていたところ、ちょうど本の発売直後、韓国に関する書籍を販売する東京・神保町の「チェッコリ」でオンラインイベントがあった。学生5人のうち4人は日本人で、韓国料理やK―POP、化粧品などが大好きだという。ところがニュースで報じられるのは、徴用工問題など「最悪の日韓関係」ばかり。相反する現象をどう捉えたらよいのかという問題意識から、日本と朝鮮半島の歴史や政治、外交関係の学習に取り組み、一冊の本にしたということだった。

 日韓の社会や文化論などを主な研究テーマとする静岡県立大の小針進教授は、この本をゼミ合宿の課題図書の1冊に指定した。戦後の日韓関係を分析した木宮正史・東大大学院教授の「日韓関係史」(岩波新書)など計3冊を事前に学生に読んでもらい、より深みのある討論を行うのが狙いだった。

 9月にオンラインで開かれたゼミ合宿に、私もゲストとして一部参加した。出席した学生は約20人で、このうち男子学生は2人のみだった。韓国への関心度に男女間で顕著な差があるのは、どの大学でも同様の傾向だ。この点については、機会を改めて書きたい。

 学生たちのリポートでは、「『日韓』のモヤモヤ」本には理解を示しつつも、違和感や疑問もあるという批判的な感想が多かった。それでも、次のような点は小針ゼミの学生も同じように受け止めてい…

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大貫智子

政治部記者

神奈川県生まれ。2000年入社。前橋支局、政治部、外信部を経て13~18年ソウル特派員。12年と16年に訪朝し、元山や咸興、清津など地方も取材した。論説委員、外信部副部長を経て、21年4月から政治部で日本外交を取材。ソウル駐在中から取材を始めた日韓夫婦の物語「帰らざる河ー海峡の画家イ・ジュンソプとその愛」で小学館ノンフィクション大賞を受賞した。「愛を描いたひとーイ・ジュンソプと山本方子の百年」と改題し、刊行。