改革の妨げになる危険も 岸田首相の「聞く力」

竹中治堅・政策研究大学院大学教授
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竹中治堅氏=竹内紀臣撮影
竹中治堅氏=竹内紀臣撮影

 岸田文雄政権は、思いつきで突然何かを言うということはなく、政策も官邸の体制も非常に安定している。内容も中長期的には適切な政策が並ぶが、経済・社会の改革を積極的に進める方針を示していない。

 来夏に参院選が控えていることもあり、今後は改革に取り組む姿勢を見せ、成果を出していくことが求められる。

デジタル化とシェアリング化で改革を進めるべきだ

 「成長と分配の好循環」というが、やはり原資がなければ分配することはできず、成長重視で政策を進めるべきだ。

 岸田氏は、成長戦略として科学技術への投資拡大を掲げる。世界的に技術開発が進む中、これまで日本の投資は非常に少なかった。重点を置く経済安全保障に関しても、世界の潮流を見れば当然取り組むべき課題だ。

 ただ、改革をどこまで行おうとしているのかは不明確だ。岸田氏は、改革について弱肉強食で冷たいイメージがあると述べた。しかし、世界はデジタル化とシェアリング化で構造改革を進め、新しいサービスを生み出している。日本ではライドシェアや民泊、オンライン診療などを実施するうえで規制が多すぎる。

 小泉純一郎政権以降の構造改革路線について、あまり成果がなかったと考える人もいるが、少子高齢化や医療費の増大などさまざまな問題が指摘されている。改革する姿勢を示さなければ、国民に将来への明るい見通しを示すことはできない。今後、「デジタル臨時行政調査会」や「デジタル田園都市国家構想実現会議」で、どのような改革を行っていくのか注視したい。

所得引き上げが課題

 日本経済において、過去20年間の最大の問題は所得がまったく上がっていないことである。日本は諸外国と比べて貧しくなっていると感じている国民が多い。…

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竹中治堅

政策研究大学院大学教授

 1971年生まれ。93年東京大法学部卒、大蔵省(現財務省)入省。98年米スタンフォード大大学院博士課程修了。専門は比較政治学。2010年から現職。