岸田政権に対するクレムリン筋の見方

佐藤優・作家・元外務省主任分析官
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佐藤優氏=久保玲撮影
佐藤優氏=久保玲撮影

 日露関係で、表面上、大きな動きがなくなると、決まってクレムリン(ロシア大統領府)筋から筆者に情報が届く。ロシア側の認識を筆者に伝えれば、それが新聞、雑誌などを通じて首相官邸やロシア政治に関心を持つ人に届くとの計算からであろう。

 今回は11月末に文書で分析メモが届いた。まずはメモをそのまま紹介する。

 <1.日本との対話をすべきか否か、このような議論がモスクワでまだ続いているが、悲観的な声がますます強まっている。その論旨は、岸田文雄首相の平和条約に関する立場は、彼の最近の発言が示すように全く建設的ではない、彼が口に出すことは、ロシアが過去何度も聞いたことのある4島返還論だけだ、というものだ。

 2.(1)クレムリンのある専門家は、「日本はロシアと向き合う時、顔に同じお面をつけている。それは怒った顔でも優しい顔でもないが、問題なのはそのお面の下にも本当の顔がないことだ。お面など必要なく、必要なのは本当に話し合いをしようという姿勢だ。終わりのない4島議論など聞きたくない」と言っている。

 (2)ロシアはクリル諸島の優遇税制などを含むさまざまな投資環境を提供したプロジェクトを提案したが、日本企業が参加することはないと結論づけた。日本はゲーム参加を放棄したことになる。この事実をモスクワは将来にわたり指摘することになるだろう。

 3.ロシアと中国との関係強化も対日関係に影響している。中国の指導者は過去何度も繰り返しプーチンに対して、「日本との対話は忘れた方が良い。日本は年々、米国の統制下に入っている」と強調してきた。

 4.ロシア内外の意見では、岸田政権は南北朝鮮と関係改善をする能力も担当者も不在で、北朝鮮のミサイル危機について非難の声をあげ続けるだけだ。

 5.現況においてできることは、ロシアと日本の首脳会議が意味あるものになるのか、非公式チャンネルでの接触を積極的に進めるだけだろう。>

 まず、クレムリン筋は、岸田政権の北方領土政策が4島返還に回帰したのではないかと見ている。…

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佐藤優

作家・元外務省主任分析官

 1960年生まれ。同志社大大学院博士前期課程修了。神学修士。外務省入省後、モスクワの日本大使館に勤務。著書に「自壊する帝国」「私のマルクス」など。毎日新聞出版より「佐藤優の裏読み! 国際関係論」を刊行。