すべての政治家は「生活保護は権利」との発信を コロナ禍で2度目の年末年始を前に

稲葉剛・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授
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路上生活者に食料などが入った袋を渡すボランティア(左)=東京都台東区で2021年9月14日、小出洋平撮影
路上生活者に食料などが入った袋を渡すボランティア(左)=東京都台東区で2021年9月14日、小出洋平撮影

生活困窮者が増える年末年始

 コロナ禍で2度目の冬が到来した。

 東京都内各地でホームレス支援団体が定期実施している食料支援に集まる人の数は、緊急事態宣言が終了した10月以降も高止まり状態になっている。

 毎年、年末年始は日払いの仕事が減少し、生活に困窮して路上生活へと陥る人が増える時期となる。現在、各支援団体は年末年始の相談会開催に向けて準備を進めているが、関係者の頭を悩ませているのは、支援を求めて集まる人が増加傾向にある中、「一体、何食分のお弁当を用意すればよいのか」という問題だ。

 今年の正月に都内の教会で実施された相談会では、2日間で計約700食の弁当が提供されたが、今回はそれを上回る人が集まるのは確実だとみられている。

シェルターは常時満室状態

 昨年春以降、コロナ禍の経済的影響により生活に困窮する人が急増したことを受けて、各地の生活困窮者支援団体は活動を拡大して、対応に当たってきた。

 私が代表を務める「つくろい東京ファンド」は、民間賃貸住宅の空き室を活用した個室シェルターを都内25室(2020年2月)から56室(21年12月)まで増設。これらの個室には10代から70代までさまざまな世代の生活困窮者が入所しており、シェルターは常に満室状態になっている。

 首都圏を中心に40以上の生活困窮者支援団体が集まり、昨年春に結成された「新型コロナ災害緊急アクション」では、生活に困窮して行き場を失った人からのSOSを受け止めるメール相談窓口を設置し、「今夜から路上生活になる」「所持金が数十円しかない」といった緊急性の高い相談メールが届いたら、スタッフがその人のいる場所まで駆けつけて支援をする、というアウトリーチ型の緊急支援活動を継続してきた。

 この20カ月の間に寄せられたSOSは1000件を超えるが、緊急支援が長期化することにより、さすがにスタッフも疲労の色を隠せなくなっている。

「緊急お助けパック」

 そこで、「つくろい東京ファンド」では、民間の事業者にも緊急支援に協力していただく「せかいビバーク」というプロジェクトを10月から始めている。これは、1泊分の宿泊費や食費、相談機関に行くまでの交通費等を入れた「緊急お助けパック」を作り、そのパックを都内各所に置いてもらうという取り組みであり、東京のいたるところに行き場を失った生活困窮者が駆け込める支援スポットを作ることをめざしている。

 すでに飲食店や薬局、寺院、教会、NPOが運営するフリースペース等が「緊急お助けパック」の設置に協力してくれており、支援スポットは現在、都内十数カ所に広がっている。コロナ禍の影響で店舗の経営が苦しいであろう民間の事業者が、無償で私たちの活動に協力してくれているのはありがたい限りだ。

鈍い「公助」の動き

 このように、生活に困窮した人々に手を差し伸べる民間レベルでの支え合いが大きく広がる一方、肝心の「公助」の動きは…

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稲葉剛

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

 1969年生まれ。一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。14年まで理事長を務める。14年、つくろい東京ファンドを設立。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『コロナ禍の東京を駆ける』(共編著、岩波書店)など。