宮家邦彦の「公開情報深読み」

ロシア提案の「NATO東方不拡大条約」草案を「深読み」する

宮家邦彦・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
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ロシアのプーチン大統領=2021年12月20日、スプートニク通信AP
ロシアのプーチン大統領=2021年12月20日、スプートニク通信AP

 共同通信は、12月17日にロシア外務省が「プーチン大統領が提案した北大西洋条約機構(NATO)東方不拡大を保証するための米露2国間の条約案を公表した」と報じた。米側は「NATO諸国がロシアに対し旧ソ連諸国のNATO加盟を排除する義務を負う」条約草案の内容自体は「受け入れない」ものの、ロシアと「協議する意向は示した」という。

 本邦メディアは、同条約案が米国に対し「NATOに加盟していない旧ソ連諸国の領内に軍事基地を持たないこと」「これらの国々の軍事施設を使用しないこと」などを求めていると簡単に報じている。それにしても、今回ロシア側の態度が従来以上に強硬に見えるのは何故だろうか。今回はロシアが発表した「NATO条約草案」の内容を深読みする。

 毎度のことながら、以下はあくまで筆者の個人的分析である。

ロシア側要求の内容

 まずはロシア側提案の詳細から見ていこう。今回ロシアが提案したのは米露間の2国間条約案と露・NATO間の多国間条約案の二つらしいが、現時点で入手可能、または報じられている両草案の概要はおおむね次のとおりだ。長文なので、ここでは要点のみ簡潔にまとめてご紹介したい。いつもの通り、【】内は筆者のコメントである。

 ■NATO全加盟国は、ウクライナなどに対するNATO拡大を慎み、ウクライナや他の東欧、南コーカサス、中央アジア諸国の領土内でいかなる軍事行動も…

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宮家邦彦

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1953年生まれ。外務省日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを経て2005年に退職。立命館大客員教授、外交政策研究所代表なども務める。近著に「AI時代の新・地政学」。フェイスブック「Tokyo Trilogy」で発信も。