MMTとTMTとRMT 「結論のない議論」よりも「現実的な具体策」

大塚耕平・国民民主党政調会長
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大塚耕平氏=竹内紀臣撮影
大塚耕平氏=竹内紀臣撮影

 MMTは現代金融(貨幣)理論(Modern Monetary Theory)の頭文字だ。独自通貨を有する国は通貨を限度なく発行できるため、デフォルト(債務不履行)にはならない。インフレにならない限り、財政赤字は気にしなくてよい、国債はいくら発行してもよいと主張する。

 こうした考えに基づいて積極財政を求める意見が与野党を問わず強まっており、国民の中にも同様の主張が以前より拡大している印象だ。

 一方、財政健全化の必要性を主張するのが従来の常識的な主張だ。以下、対比のために、そうした考え方をTMT(Traditional Monetary Theory)、伝統的金融理論と記す。

MMT「紙幣を印刷させれば」

 MMT派の主張の根拠は主に3点だ。

 第一は、国は負債だけではなく資産も有しており、純資産(資産マイナス負債)で考えることが必要と主張する。

 そのうえで、日本の純資産はゼロ近傍(負債と資産がほぼ同額)なので問題ないと結論づける。

 第二は、日銀が国債を買い続けることができる(事実上の引き受けができる)ため、政府は日銀に紙幣を印刷させれば財政は回り続けるという論拠だ。いわゆる「統合政府論(アマルガメーション・アプローチ)」である。

 第三は、財政健全化は度々先送りされ、かつ財政赤字は拡大しているものの、現に何も起きていない、インフレも発生していない、だから大丈夫だという論拠だ。MMTの提唱者の一人である米ニューヨーク州立大のケルトン教授も、自身の主張の正当性の根拠として日本の状況を挙げている。

TMT「国債を買い続けることはできない」

 一方、TMT派は上記の3点に関してそれぞれ次のように主張する。

 第一に、国の資産といっても、実際にそれを購入する人がいなければ資産としての価値も意味もないとする。

 第二に、日銀が国債を買い続けることはできないと主張する。日銀がYCC(イールドカーブ・コントロール)と称して長期金利を政策的に低位固定化せざるを得なくなっていることが、市場の国債消化能力が限界に達しつつあることの証左と指摘している。

 日銀がYCCを止めると、国が民間金融機関に市場経由で国債を発行し、それを日銀が市場から取得するという「日銀トレード」ができなくなる。

 「日銀トレード」ができなくなれば、日銀はまさしく国債を直接引き受けするしかない。その場合、投資家は国債売却、円売り、つれて日本株売りという悪循環に陥る。つまり、債券安、円安、株安のトリプル安だ。

 第三に、上記第二の状況に至って急激な円安が生じると、輸入物価高を含め、制御できないインフレが発生すると主張する。

 そのうえで、上記第二、第三の状況が現実化した場合、政府はその流れを止めるために財政再建策を発表しないと、市場も投資家も「日本売り」を止められないと考える。

 その結果、結局は伝統的な理論通りに財政再建策を発表することとなり、それはTMTが妥当であることの証左と主張する。

大丈夫か

 これだけ正反対の主張なので、いくら議論してもMMT派とTMT派の主張の優劣について結論が出るはずがない。

 接点を見いだそう。

 第一に、財政状況が「悪い」よりは「良い」方が望ましいことには誰もが賛同すると思う。

 第二に、だからといって、経済状況を悪くしても財政状況を改善するという対応は本末転倒だ。この論理にも多くの人が合意できると思う。

 第三に、とはいえ、日本は純資産がゼロ近傍だから「大丈夫」か「大丈夫ではない」かは、後者に分がある。

 国際通貨基金(IMF)の最新統計(財政モニター<2018年10月>掲載の16年時点データ)では、日本の資産に占める金融資産の割合は47.1%。残り52.9%は非金融資産だ。橋や道路、山林などの非金融資産は、誰かが購入してくれないと資産価値はない。国民が購入するとも思えず、だからといって諸外国(中国など)に売却するわけにもいかない。

 第四に、以上を踏まえると、この局面では財政出動、積極財政を維持できるような工夫をしつつ、一方では異常な金融緩和による財政ファイナンスを是正する意思表示、市場に対するメッセージを発することが必要だ。

現実的な具体策

 そこで、現実的な隘路(あいろ)を探すと、具体策のポイントは以下の2点だ。

 第一に、…

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大塚耕平

国民民主党政調会長

1959年生まれ。日本銀行を経て、2001年参院初当選。副内閣相、副厚生労働相、民進党代表、国民民主党代表代行などを歴任。参院愛知、当選4回。