新年は「日本の劣化」を覆す年に!

田中秀征・元経済企画庁長官
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田中秀征氏=宮武祐希撮影
田中秀征氏=宮武祐希撮影

 私は過ぎ行く本年(2021年)を、「日本の劣化を確認した年」とし、来年を、劣化を検証してその原因を厳しく追及し「新しい展望を開く年」にすべきだと考えている。

劣化が誰の目にも見えてきた

 思えば、昨年(20年)は、未知のコロナ禍との戦いに明け暮れ、翌年に控えた東京オリンピック・パラリンピックや衆院総選挙の動向に関心が集中していた。

 しかし、五輪も総選挙も終わって、与野党指導者も交代すると、人々の関心が大きく変わってきた。霧が晴れるように、日本の劣化した現状が誰の目にも明確に見えてきたのだ。

上位から転落する経済指標

 経済指標はこのところ軒並み上位から転落している。象徴的なのは日本の製造業の生産性。00年の世界1位が18年には16位に後退(生産性本部)してしまった。平均賃金も経済開発協力機構(OECD)加盟国中で22位。1人当たりの国内総生産(GDP)も主要7カ国(G7)中の6位(19年)に落ち込んでいる。

増える「ため込み」

 賃金が上がらず、消費も低迷して、国の財政金融政策が空回りする中で企業と個人の「ため込み」が急増している。

 20年度の企業の内部留保(利益余剰金)が484兆円に達し、個人の金融資産は今年度末に初めて2000兆円の大台に乗るという。

 企業も個人も将来を見据えてその身を守るにはため込むほかはないと考えているのか。国の政策や経済運営への強烈な不信が底流にある。

ワクチンと半導体で右往左往

 国民が、日本の劣化を身にしみて感じたのは、ワクチンと半導体をめぐる右往左往である。ノーベル賞受賞者が多い医薬業界でありながら、ワクチンが輸入頼みという屈辱。その背景には企業や学界、行政の深刻な問題があるのだろう。日本はいつの間にか新しい技術の研究・開発への往年の意欲が無くなってしまっている。

統治力も

 何よりもこの20年間、政府の統治力と構想力の著しい劣化があったとしか言いようがないだろう。

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田中秀征

元経済企画庁長官

1940年長野県生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学法学部卒業。83年衆議院議員初当選。93年6月に新党さきがけを結成し代表代行に就任。細川護熙政権の首相特別補佐。第1次橋本龍太郎内閣で経済企画庁長官などを歴任。福山大学教授を30年務め、現在、福山大学客員教授、さきがけ新塾塾長。主な著書に「日本リベラルと石橋湛山――いま政治が必要としていること」(講談社)、「判断力と決断力――リーダーの資質を問う」(ダイヤモンド社)、「自民党本流と保守本流」(講談社)、「平成史への証言」(朝日新聞社)。