サステイナブルな政治を実現するために-勝った者勝ちのしくみを変える-

加藤秀樹・構想日本代表
臨時国会閉会を受け記者会見する岸田文雄首相=首相官邸で2021年12月21日、竹内幹撮影
臨時国会閉会を受け記者会見する岸田文雄首相=首相官邸で2021年12月21日、竹内幹撮影

 夏の菅政権の迷走から首相退陣、そして岸田政権発足、総選挙、野党第1党の党首交代と、2021年後半、政治の世界は大きく動いた。ところが、私たちには政治が大きく変わったという印象はない。逆に大きな政治イベントがあっても政治は変わらないというのが、今の日本では一般的な雰囲気になっている。

 国会での議論やテレビ、新聞の報道も国会議員の文通費の問題など一時は派手に取り上げるが、すぐに終わる。

 多くの国ではこれだけ政治の世界が急変すれば、政治の中身も大きく変わるし、社会も揺れる。

 日本ではなぜそうではないのか。

 一言で言えば、動いたのは与野党とも党内「政局」だけで政治全体の構図は変わっていないからだ。与党が打ち出す政策も看板はともかく、内容は大きくは変わっていない。野党も同様で、他の党との付き合い方を変えると言っているだけなのにはあぜんとする。

 政治の中身が変わらないからダイナミズムがない。国民の関心も向かない。これらがニワトリと卵の関係になっている。

 これを、日本の政治全体がゆでガエル状態になっていると言っても何の解決にもならないので、ここでは、政党に関する制度、しくみの問題について考えてみたい。一言で言うと、「勝った者勝ち」のしくみになっているのだ。つまり、お金=政党助成金も、国会の各委員会の委員長もすべて議席に応じた配分になっている。日本ではこれは当然のように思われているが、世界ではそうでもない。政党助成は欧州連合(EU)では多くの国で行われているが、伝統的に「野党は与党のスペア」と考えられてきたイギリスなど、与野党間のバランスをとるために相対的に野党に手厚くしている国が目立つ。

 国会での議論については、日本やEUの多くの国の「議院内閣制」では、与党が掲げた政策を実行するのが内閣なのだから、与党議員が自分たちが作った内閣に質問すること自体がナンセンスと言ってもいいぐらいだ。大方が、サクラ質問か自党の大臣や首相を持ち上げるのは目に見え…

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構想日本代表

 大蔵省(現財務省)で勤務後、1997年、政治家や官僚では踏み込めない政策を「民」の立場から立案、提言そして実現するため、非営利独立の政策シンクタンク・構想日本を設立。公益法人改革をはじめ制度改革などの形で実現したものは40以上。2002年から始めた「事業仕分け」は、国レベルでは自民党(2008年)、政府(2009年から現在まで毎年継続)、国会(決算行政監視委員会、2011年)で行われ、制度として定着。事業仕分けの発展形である住民協議会と合わせて約300回開催。そのうち、無作為に選ばれた住民が参加する方式は、これまでに約150回開催し、参加者累計は約1万人。政治・行政を「自分ごと化」する手法として高く評価されている。選挙で議員を選ぶ民主主義の限界が指摘される中で、ヨーロッパの研究者にも注目されている。2019年から、すべての国の事業をキーワード検索できるサイト「JUDGIT!(ジャジット)」を運営。慶應義塾大学総合政策学部教授、東京財団(現東京財団政策研究所)理事長、東京大学公共政策大学院実務家教員、京都大学特任教授、京都大学経営協議会委員、四国民家博物館理事長などを務める。著書に「道路公団解体プラン」(文芸春秋、加藤秀樹と構想日本編)「ひとりひとりが築く新しい社会システム」(ウェッジ、加藤秀樹編著)「浮き足立ち症候群 危機の正体21」(講談社、加藤秀樹編著)「ツルツル世界とザラザラ世界・世界二制度のすすめ」(スピーディ、加藤秀樹著)。