Social Good Opinion

違和感を育てる

宇都宮裕里・株式会社4Nature所属
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宇都宮裕里さん=筆者提供
宇都宮裕里さん=筆者提供

 せっかく貴重な機会をいただいたので今日は自分のことを考えてみた。

 そして、すぐに分かったことがある。自分のなかでの、ものごとに対する視点は今も昔もあまり変わっていないということだ。

小さな違和感

 小学校4年生のある日、総合の授業でなにか自由なトピックを一つ選んで各自発表するという機会があり、私はある国を取り上げた。なぜその国にしたのか詳しい理由までは覚えていないのだが、テレビの向こう側に映る太平洋に浮かぶ(沈む)国の現在を知ったことがきっかけだったと記憶している。

 当時は2005~06年だった。その国は地球温暖化によって海面が上昇し、将来的には国土を失うかもしれないと危惧されていた。どうして?という率直な疑問があり、自分の住んでいる日本と同じ地球にありながら、なぜその国だけが?という違和感が出てきたのだ。海面上昇の要因など、ニュースになっている事柄を自分なりにまとめて無事発表は終わった。

 当時のALT(外国語指導助手)の先生も同じ南太平洋地域のソロモン諸島出身の方だったこともあり、遠い土地でのトピックでありながら現実的だった。

 その国はツバルという島国で、そしてそれから15年以上たった現在、気候危機としてなお議論されている。<SNSで拡散「ツバル水没は温暖化とあまり関係ない」は根拠不明

 そして、当時小学生ながらに抱いた違和感は、それから約10年後にも面白い出合いをもたらした。

 月日はたち、大学生活も終わろうとしている4年次に、運よく米国のオレゴン州ポートランドへ留学に行けることになった。中学の時の英語の授業に魅せられていつかは行きたいと思っていながら大学ではサッカーに没頭し、そんな憧れも半ば諦めていたのだが、予備校で高校生と一緒に壊滅的な英語を一から振り返り、なんとか基準のラインに到達できたのだった。

ポートランド州立大学で行われるファーマーズマーケット=筆者提供
ポートランド州立大学で行われるファーマーズマーケット=筆者提供

 月並みな感想だが、米国の文化は日本とはまるで違った。家には土足であがることができるし、お酒は21歳未満は非合法だし、銃の所持が認められているらしい。そして日本では嗅いだことのない匂いも漂っていた。

 異文化として楽しみ受容できる部分も多かったが、違和感がある部分として、マリファナ(大麻の穂や葉を乾燥させたもの)が社会に共存していることがとくに自分にとっては興味深かった。何より、ドラッグという側面だけでなく産業利用についても社会全体として理解が進んでいたことも興味が引かれる大きな要因だった。そしてこの違和感をひもとくために調べていくと、産業的な活用をしていくことで社会にとって有益な植物にもなりうる可能性を秘めていることがわかった。

日本では伝統家屋のかやぶき屋根にも使われる=筆者提供
日本では伝統家屋のかやぶき屋根にも使われる=筆者提供

社会の仕組みへの興味

 大麻と聞くと、日本の教育を受けた人の多くがドラッグを連想するが、実はいくつか品種があり、日本では酩酊(めいてい)成分の極めて少ない品種(英語ではヘンプという)を都道府県からの許可を得た農家によって栽培されている現状がある。近年欧米を中心に医療用途での栽培や、リラクゼーションを目的とした商品開発などグリーンラッシュと呼ばれるブームが起こっているが、その動きとはまた異なる文脈で精神的にも物質的にも日本文化を支えてきた伝統や歴史があるということはあまり知られていない。<大麻の伝統、正しく理解を 衣料や建材、薬に活用 専門博物館が情報発信 那須 /栃木

 個人的には、有限資源である石油を由来とするプラスチックに代替される素材となる可能性があることがヘンプの魅力だと感じているが、その資源としての可能性を生かしたいと思ったときに、仕組みとして社会に浸透させていくためにはどのようにしていけばいいのかわからなかった。まずはウェブメディアを立ち上げて海外の動向を記事にしてみたり、一般の方たちのヘンプに対するイメージをエッセーにしてもらうなど、まずはヘンプについて考えたり知ったりしてもらう活動を始めてみたものの(現在は閉鎖)、日本文化との密接な関係とは裏腹に、拒絶反応が強くもっと理解していく体制がないことから、より根本の社会の仕組みから考えてみる必要性を感じた。

=株式会社4Nature提供
=株式会社4Nature提供

 私にとってヘンプは、あくまでも社会全体としての価値観や仕組みについて考える一つのきっかけとなった存在ではあるが、そうしたことを考えるためにはきっと、まずはフラットに誰でも議論ができたり情報をシェアできたりするような場が重要で、人と人がどのようなコミュニケーションをとりどのような価値観が共有されることでそれぞれが抱えている課題が解決できるのかを学ぶところから始める必要があると考えた。

柔軟で寛容性のある社会へ

 現在は株式会社4Natureで、サトウキビを由来としたサトウキビストローの販売、コミュニティーコンポストやCSA LOOP(CSAと呼ばれる地域支援型農業とコンポストなどの食循環を組み合わせた仕組み)などの仕組みづくりを通して、まちのなかでコミュニティーが自律的に保たれ、人にもモノにも持続可能な循環をつくるべく活動をしている。

 特に最近は、CSA LOOPという仕組みで寛容性を伴った関わり方を提案している。余地のあるコミュニティーで誰かのアクションがまた違う誰かのアクションを触発していくように、私たちのつくる仕組みが持続することで文化が醸成され、やがて関わる人の価値観を変えていけるような提案をしていければと思っている。

 コミュニティーのなかで小さな違和感が大切にされ、咀嚼(そしゃく)されていくような、そんな優しい社会を目指したい。

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宇都宮裕里

株式会社4Nature所属

 大学在学中に留学した米国オレゴン州のポートランドでまちづくりの面白さに出合う。プラスチックの代替にもなりうるなど資源としてのヘンプ(大麻)に興味を持ち、新卒で入社した会社ではヘンプの普及に取り組む。現在は株式会社4Natureにて、1.2 mile community compostやCSA LOOPなど、都市部での資源循環や地域循環、そして社会寛容性を伴ったコミュニティーづくりに取り組む。