22年の日中関係:高まる日本の国際的影響力 問われる外交力とグローバルビジョン

青山瑠妙・早稲田大大学院アジア太平洋研究科教授
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中国の習近平国家主席=北京で2021年12月31日、新華社AP
中国の習近平国家主席=北京で2021年12月31日、新華社AP

2022年の日中関係は安定するか?

 2022年の日中関係は穏便に運ぶだろうと一般的にみられている。今年は日中国交正常化50周年に当たり、お祝いの行事が大々的に催される記念すべき年であるからだ。

 2月には、冬季オリンピックも北京で開催される。北京オリンピックを成功させるために、中国政府も日中関係に大きな波風が立つことは望まないであろう。さらに秋には、中国共産党大会が開催される。習近平国家主席の3期目続投が確実視されているなかでも、日中関係が大きく損なわれるような事態が生じれば、習近平体制が推し進めてきた対外政策への批判につながりかねない。

 とはいえ、日中関係に不穏な空気が漂い始めていることも事実である。昨年10月に公表された言論NPOによる日中共同世論調査によると、中国では日本に良くない印象を持っている人が急増し、前年比13.2ポイントも増えたという。コロナ禍のなか、日本へ観光で訪れることができず、一般の中国の人々が日本の良さに触れる機会がなかったからかもしれない。

 言論統制が極めて厳しいいまの中国の政治環境で、中国の対日世論悪化の背後に、政治的な要素が全く作用していないことも考えにくい。昨年4月に菅義偉首相(当時)が訪米した際に発表された日米共同声明では、半世紀ぶりに台湾海峡に言及し、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題も書き入れられた。8月と12月に実現した、日本の自民党と台湾・民進党の日台外交・防衛政策責任者による与党版「2+2」は、対中抑止が暗黙の議論のテーマだった。

 中国政府はこうした日本の動きに関して強くけん制しており、対日批判を繰り広げるようになったのである。中国の在日大使館もホームページで「日本は台湾問題で連続して甚だしくネガティブな動きを見せ、両国間の政治的相互信頼を損ない、中日関係の雰囲気を悪化させている」との記述を載せている。

 言論NPOの調査によると、一般の中国人の対日観変化の理由として、日中両国に「信頼関係ができていない」、日本の「一部政治家の不適切な言動」などを挙げている。日本に対する中国の好感度の低下は、中国政府の対日政策の変調を反映したものである。

 そもそも、日中関係に関する中国政府の公式見解は「チャンスと挑戦が併存している」である。22年の日中関係が予定調和的に安定すると見るのは楽観的すぎるかもしれない。

求められる政策バランス:対中抑止と日中関係安定化

 21世紀に入ってから日本を取り巻く安全保障環境が激変した。経済力と軍事力の増強を背景に、中国は海洋問題で強硬な姿勢を見せている。東アジアにおける変容する安全保障上の課題への対応は、日本一国だけでは限界があり、日本としては日米同盟を強固にしつつ、ほかの欧米先進国との安全保障関係を進化させていくことが必要である。

 昨年1月に誕生したバイデン政権は民主主義国家の結束を強め、中国と対抗するさまざまな国際的な枠組みを構築している。日米豪印が参加する安全保障や経済を協議する枠組みクアッド(Quad)はグローバルヘルス、インフラ、気候変動、人的交流と教育、重要・新興技術、サイバーセキュリティー、宇宙の七つの分野を中心に協力し、中国の一帯一路に対抗して発展途上国への融資を行うB3Wイニシアチブは気候変動、グローバルヘルス、デジタル、ジェンダーを柱としている。また21年9月15日に、豪英米の安全保障協力オーカス(AUKUS)も動き出した。

 Quad、B3W、AUKUSなどの構想に加え、貿易・科学技術政策においては、バイデン政権は同盟国との間で、通信企業や中国製通信機器の排除を進め、半導体のサプライチェーンの構築、市場経済に基づかない中国の貿易慣行、人工知能(AI)やサイバーセキュリティなどに関する共通基準の形成において協力を強めている。

 バイデン政権の働きかけもあり、中国に配慮を見せていたフランス、英国、そしてドイツなどの西欧諸国もインド太平洋地域に艦艇を派遣し、日本との防衛関係を強化する動きを見せている。

 対中抑止の国際的なネットワークが着々と整備されていることは、日本にとっては大きな安心材料となる。しかし…

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青山瑠妙

早稲田大大学院アジア太平洋研究科教授

 慶応大大学院博士課程修了。法学博士。米ジョージ・ワシントン大客員研究員を経て、2018年から早稲田大現代中国研究所所長。専門は現代中国政治外交。著書『現代中国の外交』は08年に大平正芳記念賞を受賞。