日本の参院選、米国の中間選挙、中国の共産党大会-米中の決定的対立の序曲?

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
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田中均氏=中村藍撮影
田中均氏=中村藍撮影

 本年は国内政治が国際秩序を大きく揺さぶる年となりそうだ。日本では夏に参院選、米国では秋に中間選挙、そして中国でも秋に5年ぶりの共産党大会が開催される。いずれも現政権が政権の浮沈をかけて挑む図式となり、新型コロナウイルス感染の収束を図ることができるか、経済回復にどれだけ確かな見通しを持つことができるか、が重大な要因となるのだろう。

 ただ、日米中の3国とも社会の矛盾や政治の構造的変化が加速されてきており、コロナ収束に相当な時間がかかる環境下で、そのような国内情勢変化を背景として米国・日本対中国の対立が決定的となる可能性があるのではないか。

中国の共産党統治と市場経済の矛盾が深刻となる

 中国の統治が大きな曲がり角にある時期の共産党大会開催だ。

 鄧小平の改革開放路線の下で対外的には低姿勢を保ちつつ、市場経済を導入し、世界貿易機関(WTO)に加入しグローバリゼーションの恩恵を受け、10%を超える成長を実現してきた時代は終わった。

 日本を追い越し第2の経済大国となった2010年以降中国の対外姿勢は「戦狼(せんろう)外交」と言われるほどに攻撃的となり、「一帯一路」を掲げて影響力を拡大し、国内的には「中国の夢」として中華人民共和国成立100周年の49年までに米国と肩を並べる国力を持つ国となるとする。

 同時に揺るぎなき共産党統治を目指し、監視社会の徹底などを通じて国内の引き締めを強化してきた。しかし、その中国は今日幾つかの矛盾を露呈しつつある。

 第一には社会主義と市場経済の矛盾だ。市場経済が進んでいけば「中進国の罠(わな)」といわれるように労働コストの上昇により輸出は頭打ちとなり、経済成長は鈍化する。所得格差も拡大する。

 習近平政権は内需と外需の「双循環」を唱え、内需重視を図ってきているが、成長率は年々下降する。さらに「共同富裕」の促進を唱え、アリババなどの巨大IT企業からの巨額な資本提供を求めるとともに独占禁止法の下で巨額の罰金を科し、格差是正の原資とするとともに、共産党による巨大企業管理の梃子(てこ)としている。

 しかし自由度を失った企業や土地バブルの崩壊など、経済成長の阻害要因は増える。統治の正統性を経済成長に求めてきた共産党にとってみれば経済成長の鈍化は危機的要因だ。

 第二には国内的引き締めの成否だ。国民が豊かになるに従い自由を求める力は強まろうが、果たして自由を束縛する国内引き締めは成功するのだろうか。

 香港における民主化を求める勢いを止められないと見た中国は国家安全維持法を香港に導入し、事実上「1国2制度」に終止符を打った。香港の民主化が本土中国に影響を与えることを危惧したのだろう。

 これから経済成長率が鈍化し、所得格差などに対する国民の不満が顕在化するに伴い、共産党の強制力を使った締め付けはますます強くなっていくのだろう。

 そして、第三に、経済成長の鈍化や締め付けの強化は外国企業が中国市場で活動する余地を狭めていくだろうし、人権尊重を重視する国際社会と中国との相互依存関係も薄れていくことになる。

 これまでは香港の民主化抑圧や新疆ウイグル自治区の人権抑圧に対し限定的な制裁措置にとどまってきたが、時間とともに中国は国際社会から孤立していかざるを得ないことになるのだろう。

 そのような状況下で共産党が国内的求心力を高めるため、ナショナリズムをあおり、対外的強硬策をとっていくことも十分考えられる。今秋の共産党大会は習近平総書記の3期目を決める政治的に極めて繊細な会合になることが予想される。

米国の国内分断もさらに深まる

 バイデン米大統領就任から1年が経過したが、米国の厳しい分断が緩和される方向に向かっているとは考えられない。

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田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。2021年3月よりTwitter開始(@TanakaDiplomat)。毎日リアルタイムで発信中。YouTubeチャンネル(@田中均の国際政治塾)。