
子ども関連政策の政府の司令塔となる新省庁の名が「こども家庭庁」に決まった。「こども庁」だった原案に土壇場で「家庭」が付け加えられた。「子どもの育ちは家庭が基盤」という自民党の一部議員の声が反映された格好だ。
名は体を表す。名称変更が「社会全体で子どもを支えていく」という理念の後退につながることを懸念する。
内容は後退、名称も最終盤で
「子どもは家庭を基盤に成長する。『こどもまんなか政策』を表現しつつ、『こども家庭庁』とさせてほしい」
昨年12月15日、自民党本部であった「こども・若者」輝く未来創造本部などの合同会議で、座長の加藤勝信・前官房長官はこう述べて新省庁の突然の名称変更に理解を求めた。
会議では「『こども庁』のままにすべきだ」との意見も出されたが、名称変更は賛成多数で認められた。政府は同21日に基本方針を閣議決定しており、今国会に関連法案を提出して2023年度に「こども家庭庁」を発足させる意向だ。
新省庁創設案は、菅義偉前政権の時に菅氏主導で浮上した。原案の「こども庁」との名称は、「子どもを中心に置く社会」の実現を目指して付けられた。子ども関連の政策は文部科学省が教育、厚生労働省が保育や虐待防止、内閣府が少子化対策を受け持つなど、所管が多岐にまたがる。この縦割り行政を打破し、新たな司令塔の下、子ども関連政策を一元的に実現していく狙いがあった。
だが、当初は視野に入れていた幼稚園と保育所の統一「幼保一元化」は族議員らの抵抗でみるみる骨抜きとなり、また学校教育関係はそっくり文科省に残った。途中で菅氏から引き継いだ岸田文雄首相に熱意はうかがえず、財源手当は手つかずのままとなっている。
縦割りを残す代わり、こども家庭庁には他省庁への「勧告権」が盛り込まれた。他省庁の対応に不備がある場合、こども家庭庁は注文をつけることができる。とはいえ、法的拘束力はない。内容が次々後退していくなか、最終盤で覆されたのが新省庁の名称だ。
「家庭」が名称に入った意味は
名称変更には、戦前の家制度に郷愁を覚え家父長制復活を願う保守系議員の意向が反映された、との指摘もある。しかし、家庭(親)教育支援の必要性は専門家の間でも共有されているし、「家庭の子育てを支えることは子どもの健やかな成長を保障するのに不可欠」という加藤氏の説明は一面の真実だ。そもそも、公明党の先の衆院選での公約は「子ども家庭庁」だった。「家父長制復活」はためにする議論だろう。
ただ、高市早苗政調会長や山谷えり子氏ら名称変更を求めた自民党議員は…
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