ウェストエンドから

オミクロン禍が浮き彫りにする日英の違い

服部正法・欧州総局長
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買い物客やビジネスマンなどでにぎわうロンドン中心部のリージェント・ストリート。比較的混み合っているがマスクを着けない人が多数派だ=2021年10月、服部正法撮影
買い物客やビジネスマンなどでにぎわうロンドン中心部のリージェント・ストリート。比較的混み合っているがマスクを着けない人が多数派だ=2021年10月、服部正法撮影

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的感染爆発)から2年。この間、英国に暮らし、日英両政府の対応や両国に暮らす人たちの意識を巡る「違い」が気にかかっていた。

 猛威を振るう新たな変異株「オミクロン株」を巡り、日英の「違い」はかなり大きくなってしまったなと個人的には実感している。水際対策と感染封じ込めに重点を置く日本とウイルスとの共生を進める英国。この違いは一体何に依拠するのか。

規制を次々緩和、「ウイルスとの共生」打ち出す英国

 「再び国を停止させることなく、オミクロン株の波を乗り切る見込みがある。学校やビジネスをオープンしたまま、このウイルスとの共生の方法を見いだすことができる」

 ジョンソン英首相は1月4日、記者会見でこう述べた。

 この日、英政府は新型コロナの1日の新規感染者数を21万8724人と公表した。新規感染者数が20万人を超えるのは初めてであり、いうまでもなくこれほどの爆発的な感染拡大は、昨年11月下旬以降、国内で猛威を振るってきた感染力の強いオミクロン株によるものだ。

 しかし、ジョンソン氏は会見席上、オミクロン株の感染者が従来の変異株と比べて軽症にとどまる傾向があることや、ワクチンの3回目接種が市民の間で進んでいることなどに言及したうえで、ロックダウン(都市封鎖)などの厳しい行動規制の導入を行わなくてもこの「オミクロン禍」を克服できるとの認識を強調したのだ。

 実際、ジョンソン氏は翌5日、英人口の8割以上が住むイングランドへの入国者に対してオミクロン禍になってから課していた、英国に向けて出発する前のウイルス検査をワクチン接種完了者については適用しないなど、新たな制限緩和策を表明した。

 また、9日付の英日曜紙オブザーバーは「英国では人口の大部分を対象としたワクチン接種は終わらせるべきだ」とする英政府ワクチン対策専門部会のクライブ・ディックス前部会長の意見を大きく報じた。

 同紙によると、3回目のワクチン接種の展開について支持してきたディックス氏は、それが進んだことでコロナ感染によって重症化が懸念される高齢者らの多くが保護された状態にあると指摘。4回目の大規模接種展開は必要なく、今後は「新型コロナを手なずける」ための新たな戦略が必要として、季節性インフルエンザの流行に対するのと同様の対応が必要との見解を示した。

 一方、同じく9日付のサンデー・タイムズ紙は、これまで英当局が無料で市民に提供してきた新型コロナの簡易テストキットについて、ジョンソン首相が数週間以内に無料提供を病院や高齢者介護施設などに限定すると発表する見通しだと報じた。

 同紙によると、ザハウィ教育相(前ワクチン開発担当閣外相)は新型コロナについて「パンデミックからエンデミック(一定の地域で季節的に繰り返す感染状況)への移行がみられる」と話し、検査で陽性が判明した人の自主隔離期間を現状の7日間から5日間に短縮する可能性に言及。実際に17日からイングランドでは隔離5日目と6日目に検査をすることを条件として5日間に短縮された。

 また、同紙によると、インフルエンザのパンデミックに関する英政府の諮問機関委員、マイク・ティルデスリー・ワーウィック大教授は「長期的には新型コロナはエンデミックになり、通常の風邪と似たものになる。オミクロンはたぶんその最初の一筋の光明かもしれない」と述べた。

 英国は今になって新型コロナとの共生に向けて動き出したわけではない。

 イングランドでは2021年4月以降、段階的に規制を緩和。7月上旬には、サッカー欧州選手権でイングランド代表の試合があるたびに、マスク無しのサポーターらがロンドンの街頭を埋め尽くした光景を思い出す方もおられるかもしれない。…

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服部正法

欧州総局長

1970年生まれ。99年、毎日新聞入社。奈良支局、大阪社会部、大津支局などを経て、2012年4月~16年3月、ヨハネスブルク支局長、アフリカ特派員として49カ国を担当する。19年4月から現職。著書に「ジハード大陸:テロ最前線のアフリカを行く」(白水社)。