民主主義サミット ~民主主義の試練と再生~

古賀伸明・元連合会長
  • 文字
  • 印刷
古賀伸明氏=中村琢磨撮影
古賀伸明氏=中村琢磨撮影

 1年前の2021年1月、ジョー・バイデン次期大統領を承認し正式に確定させようとした連邦議会に、ドナルド・トランプ大統領の多数の支持者が乱入し、議会を一時占領した有り様は、世界に発信され米国内外に衝撃を与えた。第二次世界大戦後のパクス・アメリカーナ、冷戦構造終焉(しゅうえん)後は民主主義国の範として世界秩序をリードしてきた国の出来事とは思えない光景だった。

 21年1月までの4年間、国際秩序や立憲政治を損なったトランプ氏は、20年の大統領選挙の敗北を受け入れず、当日も「選挙が盗まれた」「議事堂に行こう」と支持者たちの怒りをあおり続けた。その責任は明白で、厳しく問われなければならない。前代未聞の議会乱入は、米国社会の分断の根深さをまざまざと見せつけた。トランプ氏の残した傷痕は広く深い。

意義があった権威主義との対決

 新しく就任したバイデン大統領は、昨年12月、約110カ国・地域の指導者を招いて「民主主義サミット」をオンライン形式で開催した。もちろん、この種のことは初めてである。

 中国やロシアをはじめとする強権的な統治の権威主義が世界で勢いを増し、特にコロナ禍で加速している。名指しはしていないが、権威主義国家を批判し民主主義の強化を呼びかけた。近隣諸国を威圧し自由や人権や法の支配を脅かすような動きには、民主主義の価値観を共有する国・地域が連携して立ち向かっていくことが重要だ。

 改めて、民主主義の理念を再確認し、権威主義との対決を強調したことは意義があると思う。米中対立が固定化・長期化する中で、国内事情も含めてサミットを主催した米国の危機感は理解できる。

見え隠れする米国の政治的判断

 しかし、サミットへの招待の基準が明確でなく不透明であり、米国の政治的判断が見え隠れする。一部、強権的とされる国も招待されているのは事実であるし、このサミットで外された諸国が中国やロシアとの関係強化に向かう危険性もある。また、このことが敵と味方の二つの陣営に区別するような手法と映り、分断を深め加速し摩擦がおこるリスクも伴う。

 当然のことながら、中国は「民主主義は一部の国の専売特許ではない」と激しく反発、前段の12月4日には「中国の民主白書」を発表、以降、マスメディアを通じて米国の民主主義を批判した。また、サミットに合わせるように、中米のニカラグアと国交を結び、同国は台湾と断交した。

 一方では、価値観の異なる国々との協力もまた民主主義に求められている。対立すればするほど、対話を通じて危機を回避する努力が欠かせない。また、気候変動や核不拡散、感染症対策など、単独では解決できない課題が山積している。…

この記事は有料記事です。

残り918文字(全文2017文字)

古賀伸明

元連合会長

1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。現在は連合総研理事長。