潮流・深層

米国の「ヒスパニックは民主党支持」は本当か?

古本陽荘・北米総局長
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中南米系の支持者を集めたトランプ氏の選挙集会=米西部アリゾナ州フェニックスで2020年9月14日、AP
中南米系の支持者を集めたトランプ氏の選挙集会=米西部アリゾナ州フェニックスで2020年9月14日、AP

 2020年米大統領選は、選挙結果をめぐってトランプ前大統領(共和党)が「大規模な不正があった」と訴えたため、選挙の信頼性やトランプ支持者の動向に注目が集まった。その結果、有権者の投票傾向についての分析にはあまり関心が寄せられなかった。

 だが、選挙から1年以上経過し、トランプ氏が中南米系の票を想定以上に集めていたことに再び注目が集まっている。次期大統領選で中南米系の票が結果を左右するという指摘も出ているのだ。

 トランプ氏は「メキシコとの国境に『壁』を建設する」と訴え、白人労働者らの支持を受けて16年大統領選で当選した。一般には、「移民排斥」や「中南米系差別」の姿勢が批判されたという印象が強いだろう。だが実際には20年大統領選で、一部の地域では中南米系の票を大きく伸ばしている。

 民主党系の調査会社「エキス・ラブス」(Equis Labs)は21年4月に中南米系の有権者が多い地域で調査した結果をまとめ報告書を発表した。この調査によると、16年大統領選と比べて20年大統領選でのトランプ氏の得票数は、南部フロリダ州のマイアミ・デード地区では120%増、メキシコとの国境地帯である南部テキサス州のリオ・グランド・バレー地区では83%増えていた。

 そして選挙から1年経過し、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が昨年12月に公表した世論調査(21年11月16~22日実施)の結果が衝撃を与えた。「議会選挙で共和、民主のどちらの候補に投票するか」との設問で、中南米系の回答者の間で「共和党」と答えた人、「民主党」と答えた人がともに37%で並んだからだ。これまで、中南米系の多くは民主党支持者と考えられていたが、この調査の傾向が正しければ、大きな地殻変動が起きていることになる。

 中南米系の人口は増加傾向にある。10年ごとに国勢調査を実施する米世論調査局の10年調査と20年調査を比較すると、全米人口の増加率が7%であるのに対し、中南米系の増加率は23%と高率だ。人口に占める割合が大きくなれば、政治的な影響力も大きくなる。「人口動態の傾向はどんどん民主党を有利にする」とまことしやかに言われてきた。しかし、共和党支持の中南米系が増えるのであれば、その前提が崩れてしまう。

 「ヒスパニック・リパブリカン(中南米系共和党)」という本を20年大統領選前に出版した米ノースウエスタン大のジェラルド・カダバ教授(歴史学)は、「現状ではやはり、中南米系の票の過半数は民主党に行く。歴史的にも中南米票の4分の1から3分の1ぐらいが共和党に投票してきた。問題は、選挙結果を左右するほど今後、中南米系の票が共和党に流れていくかどうかだ」と語る。

 なぜ、中南米系の票がトランプ氏に流れたのか。…

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古本陽荘

北米総局長

1969年生まれ。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)。